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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.348 )
- 日時: 2013/07/19 23:59
- 名前: いろはうた (ID: VHEhwa99)
*心臓が耳に来てしまったのかと思うほど、鼓動がうるさい。
だけど、ヒタギは抱きしめてくるだけで、声も発しない。
カエデは落ち着かなく視線をさまよわせていたが、
やがてヒタギの腕の中でおとなしくなった。
やはり、なぜかはわからないが、ヒタギの腕の中は安心する。
落ち着くのだ。
—————————でも、この腕は『カエデ』のものじゃない
どこかで自分がささやきかけてきて、すっと胸が冷えた。
反射的に、指がヒタギの衣を握る。
いやだ。いやだいやだいやだ。
—————————今この瞬間は『ハルナ』のものだ。
だけど、それでも、私は———
「巫女姫」
まとわりつく思考が断たれ、カエデはゆっくり顔を上げた。
「…何?」
「今から、祭りに行く」
ひどくまじめな顔でヒタギは言い放った。
たっぷりと沈黙が落ちる。
「な、何言ってるの!?」
あまりにも唐突すぎる発言にカエデは目を見開いて、あわてて異を唱えた。
「ヒタギはまだ疲れているんでしょ!?」
「疲れてなどいない。
そもそもここに来たのはおまえと共に祭りにいくためだ」
「そ、そういう問題じゃないでしょ!」
「………おまえが、おれ以外の男と出かけたこと方がよっぽど問題だ」
地を這うような低い声にカエデは反論する気力を失った。
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