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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.351 )
- 日時: 2013/07/21 00:17
- 名前: いろはうた (ID: VHEhwa99)
*あなたと過ごした日々は
泣きたいほどに
幸せで
苦しかった。
離れてもいいなんて
代わりでもいいなんて
空言にすぎない
———ねえ、私を
ただ一人
—————————私だけを、見て。
* …ああ。
来てしまった…。
カエデはうつろな表情でつり橋を見ながらそれだけを思った。
ヒタギに半ば強引に屋敷から連れ出されて、数日前に転落したばかりの崖の上に、
今、二人で立っている。
橋はすでに修復されていて、あの日と変わらず風に吹かれて揺れていた。
「ねえ、ヒタギ。
ヒレン様に任務の報告とかしていないんでしょ。
しなくていいの?」
「一日ぐらい遅くなってもいいだろう」
最後の抵抗も、ものすごく適当な答えで一蹴され、カエデはついにあきらめた。
うなだれる彼女を、当然のように抱き上げると、
ヒタギはすたすたとつり橋を渡り始めた。
…ああ。
離してくれない腕を、
強引にでも抱きしめてくるたくましさを
嬉しい、と感じる自分は、
本当に、どうかしているにちがいない。
きっと、そうなのだろう。
そう自分にいいきかせないと、自分の中のなにかが、壊れてしまいそうだった。
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