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Re: 浅葱の夢見し ( No.390 )
日時: 2013/08/24 21:07
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*ありえないって思っていた。



——————あなたが来てくれるなんて。






*誰か、いる。

カエデは目をぱちりとあけた。

暗すぎて部屋の中はあまり見えないが、確かに人の気配を感じる。

カエデはゆっくりと身を起こした。

今、ヒタギはこの部屋にはいない。

彼は、ヒレンに任務の報告をしてくると言って、つい先程、部屋を出たばかりだ。

こんなに早く帰ってくるはずがない。

かといって、レイヤやトクマらの気配ではない。

カエデの全身に緊張が走ったとき、不意に口を大きな何かで覆われた。

「んんっ!!」

とっさに、枕元においてあった愛刀に伸ばそうとした手もつかまれた。

ならば体術だ、と背後の相手に肘を見舞おうとしたが、阻止された。

「おいおい。

 そんなに暴れんなって。

 おれだよ、おれ」

カエデは耳元のささやきに動きを止めた。

…まさか。

「よし、いいこだ。

 手、離すけど、でっけえ声出すなよ」

こくこくとうなずくと、ゆっくり手が離れた。

振り返って、カエデは震える声で、彼の名を呼んだ。

「…ホムラ…兄様…」

「おう。

 おれの名前、ちゃんと覚えてるな。

 よかったよかった」

それを聞いてカエデは思わず笑みをこぼしてしまった。

忘れるなんてこと、絶対にないのに。

わずかにこぼれる月光に照らされたのは、懐かしいホムラの顔だった。

「…よし。

 じゃあ、ここを出るぞ」

「え?

 …ひゃっ!?」

いきなりホムラはカエデを抱き上げると、ふすまを開け、足早に部屋を出て、庭に降りた。