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Re: 浅葱の夢見し ( No.393 )
日時: 2013/08/28 22:54
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*「ま、待って!ホムラ兄様!

  おろして!!」

「どうした?

 急がないとちっとまずいことになるぞ?」

そう言いながらもホムラはカエデを地面におろしてくれる。

足裏にひやりとした夜の土の感触。

それがこれは夢ではないと伝えてくれる。

月光に照らされたホムラの顔を見て、言葉にならない思いがこみ上げた。

「どうして、来てくれたの?」

きょとんとした顔でホムラは答えた。

「え、だって、おれ、おまえに約束したろ?

 ぜってえ迎えに行くってよ。

 …まさか、おまえ、忘れちまったの?」

「忘れてなんか…ない…」

そういってくれたのは、カエデを慰めるための言葉だけだと思っていた。

本当に来てくれるなんて思っていなかった。

だから、うれしい。

「来てくれて、ありがとう」

「なんだよ、急に。

 まあ、これはハルナのためでもあるしな」

カエデの笑顔が瞬時に凍った。

「あね…うえ…の…?」

「ハルナのやつ、お前が行っちまってから、むちゃくちゃ暗くなってよ…。

 鬼みたいに修行ばかりしやがる。

 おまえを身代りにしてしまったのは自分の修練が足りなかったからだってな。

 ……おれ、そういうの、そばで見てて、つれえんだよな…」

ホムラは本当に苦しそうにうつむいた。

「カエデが身代りになったのは自分のせいだって、すっげえ自分を責めてる。

 毎日、ずっとだ」

びくりとカエデは震えた。

そんなこと知らなかった。

離れて苦しいのは自分だけだと思っていた。

けれど、そんなことなかった。

誰よりも苦しかったのはカエデじゃない。

—————————ハルナだ。

「ホムラ兄様は…姉上のためだけに、来てくれたの…?」

「はあ!?

 そんなわけあるか!

 これは俺のためでもあるっての」

「本当に?

 本当にそうだって言える?」

「…カエデ。

 怒るぞ」

カエデは笑みを浮かべた。