コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 浅葱の夢見し ( No.395 )
日時: 2013/08/30 23:09
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*「おい、どうした?」

ホムラが怪訝そうな声で言うのをどこか遠くで感じた。

ざりっと音がした。

自分の足が一歩後退したのだ。

その事実に愕然とする。

嘘だ。

あんなに会いたいと乞い願ったはずのホムラじゃないか。

…はず?

カエデは呆然とホムラの顔を見上げた。

そして、悟ってしまった。

——————自分が、一切ホムラに恋愛感情を抱いていないと。

自分がここにのこりたいと思っていることを。

「あ、あ…」

意味もなく、かすれた声が出た。

最後まで気づきたくなかった。

でも気づいてしまった。

———己が本当に愛しいと思う者を。

この手を取れば、確実に影水月に帰れるとわかっている。

大切な姉、ハルナに会えるとわかっている。

だけど、体が、心が、いうことをきかない。

「カエデ?」

「ホムラ兄様。

 私…行けない」

「…は?」

「ここに、いる」

声が震える。

言ってしまった。

誰に脅迫されているわけでもなく操られているわけでもなく、自分の意志で。

「おまえ、何言って———」

「行けない」

ホムラの言葉をさえぎって、強く強く再度言い放つ。

みるみるうちにホムラの表情が険しくなった。