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Re: 浅葱の夢見し ( No.398 )
日時: 2013/08/31 23:44
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*「身代りなら、もういい。

たとえ、四鬼ノ宮が攻めてきたとしても、おれがなんとかする。

 もう、おまえが犠牲になる必要はねえんだ」

カエデは目を閉じた。

この言葉を影水月を出る前に 聞いていたら、すべてが変わっていただろう。

ホムラのことが好きだと勘違いしたままだっただろう。

ヒタギと共に過ごすこともなかっただろう。

でも、気づいてしまった。

ヒタギに出会ってしまった。

すべてが変わってしまった。

「私はここにいる。

 ホムラ兄様と一緒に、行かない」

行けない、ではなく、行かないといいきったカエデにホムラは一瞬目を見開いた。

だがすぐにその表情は、怒りのような焦りのようなものにとってかわった。

「………置いて、いかねえ…」

いつものホムラからは想像もできないような低く押し殺した声。

彼はカエデの手首を強くつかんだ。

「いっ、ほ、ホムラ兄様!!」

「…もう……もうおれは、何も失わないと誓った。

 そのためにもっと強くなると、心に誓った。

 おれの大事なものは全部おれが守る。

 ………誰にも…傷つけさせねえ…」

ホムラの瞳の色を見てカエデは震えた。

ハルナだけじゃなかった。

———この人も、カエデのために、カエデ以上に深く傷ついていたのだ。

だけど。

それでも。

「ホムラ兄様…!

 私、私は———」

「もういい。

 おまえが何言っても、連れて帰る。

 ……ここには、残さねえ」

絶対に意志を曲げない響き。

どこか狂気をも感じる。

握られた手首にさらに力をこめられ、痛みにカエデは顔をゆがめた。

ホムラはカエデを無理やり抱き上げると、もう片方の手で式神をかまえた。

だめだ。

カエデの言葉がホムラに届いていない。

(どうすればいいの…!?)