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Re: 浅葱の夢見し ( No.41 )
日時: 2013/03/31 22:52
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*遠く離れて


 ようやく生きていける気がした。


 想うだけで、満ち足りている。


 そう思い込もうとしていた。


 でも、気づいてしまった。


 私は、愚かなほどに自分を偽っていたのだと。


 離れてもいいなんて


 ただの空言だ






*光を感じて、カエデはゆっくりと目を開いた。
 
目だけを動かして、朝日に照らされ白く光る障子を見た。

 あれだけ腕枕とかいう、すさまじく危険な状態にも
かかわらず、

 熟睡してしまっていたらしい。

「もう・・・朝か・・・」

そこで、カエデは、頭のあたりが何故かすーすーする
ことに気づいた。

・・・ない。

「うそっ!」

がばっと身を起こして、隣を見れば、最初から誰もい
なかったかのように、

ふとんはぺちゃんこになっていた。

わずかにそこに残る温もりが、昨日の出来事が本当に
あったものだと伝えてくれた。

さすが忍びだというべきなのか、ただ単に自分が爆睡
しすぎて

いつのまにかヒタギがいなくなったことに気づかなか
っただけなかったのか。

「・・・うー」

とりあえず、ひとつわかったことがある。

自分は、ヒタギにおいて行かれたのだ。

ヒタギの代わりに、きれいに畳まれた、巫女装束が、

ふとんの隣に置いてある。

「・・・・・・うううー」

なんなのだ。

さんざん、人に恥ずかしい思いをさせて、勝手に消え
るとか本当になんなのだ。

カエデはよくわからない感情にまかせて勢いよく立ち
上がると、

千早と袴を手早く身に着けた。

そして、愛刀の三日月刀を腰に差した。

そして、くるりと振り返ると、すっぱーんっと小気味
よい音をたてて、

ふすまを開いた。

穏やかな日光がカエデを優しく照らしてくれるが、そ
れを振り切るように歩き出した。

(いいもん!

 自分で四鬼ノ宮の屋敷、探検する!)

別に、取り残されて寂しいとか、そういうことではな
いのだ。

別に、探検しながら、ヒタギを探すとかそういうこと
ではない。

そうだ。

そのはず。

うん。

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・だめだ。

何故か言い訳にしか聞こえない。

ますます、カエデは足を速めて廊下を駆けた。

(なんなんなのよ!)

彼女の濃い灰色の長い髪が、朝の風になびいた。