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Re: 浅葱の夢見し ( No.413 )
日時: 2013/09/06 23:47
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*シュッ



鋭い音が聞こえた瞬間、ぐいっと体が浮き、景色が一気に流れた。

さっきまでホムラがいた場所には、月光にきらめく

カエデの手のひらよりも長い針が三本、地に刺さっていた。

それが飛んできた方向には月を背にして立つ一人の忍びの姿があった。

二つの青い瞳は闇の中さえざえとした光を放っている。

「……俺の巫女姫をどこに連れて行くつもりだ」

ホムラは舌打ちをするとカエデを降ろし、背にかばうようにして立った。

ヒタギはカエデを見ていない。

ただ恐ろしいほど冷たい光を宿してホムラを見ている。

いっそ、怒りを露わにしてくれたらこんなにも恐ろしいとは思わなかっただろう。

その端正な横顔には、何の感情も表情も浮かんでいなかった。

「連れて行くじゃねえ。

 ……連れて帰るんだよ」

ホムラの言葉に、罪悪感に等しい感情が胸の中で渦巻く。

ホムラはいったいどんな表情でそう言ってくれたのだろうか。

「それに、こいつはおまえのもんじゃねえよ。

 ……俺の大切な…大切な奴だ」

それを聞いてヒタギの眉がわずかに動いた。

すうっ、と青い目が細められる。



ギャンッ



甲高い音がした後、乾いた音をたてて数本の針が地面に落ちた。

見れば、ヒタギと自分たちの間にぼんやりと光る壁があった。

ホムラの結界だ。

それが針を弾いたのだ。

ホムラはいつの間に結界を張っていたのだろうか。

だが、カエデが驚いたのはヒタギのことだ。

彼が目では追えないほど、すさまじい速さで千本を投げたのだ。

ヒタギから発せられる氷よりも冷たい殺気が肌を刺す。

顔から血の気が引いていくのが分かった。