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Re: 浅葱の夢見し ( No.44 )
日時: 2013/04/02 14:06
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*「うわあっ」

目の前には大きな広場があった。

何人もの男たちがそこで武術の修業をしていた。

だが、見た感じヒタギの姿はない。

普通の女子なら、汗くさそう、と顔をしかめるだろう
が、

カエデはその中に混じって剣術の修業をしたくてたま
らなかった。

彼女の中に、先ほどまでの変な感情や、ヒタギを探そ
うということはなくなっていた。

とりあえず、腰にさしている愛刀を抜き放ってみた。

薄い浅葱色をまとった銀の刃は一切のくもりなく、朝
日をとらえて光った。

(すぶりでもしようかな・・・)

それも何かむなしい。

やはり、剣術の修業には相手が欲しいものだ。

誰かいい相手はいないだろうかとあたりを見渡してみ
たが、

剣を持っている男はいなさそうだ。

そのとき、首筋にチリチリとした殺気のような視線を
感じた。

とっさにその場をとびのくと、素早く後ろを振り向
く。

そこには、二人の若者が立っていた。

「・・・何者だ?」

背の高い若者が感情の読めない目でこちらを見つめて
きた。

もう一人の若者も不審のまなざしをカエデに向けてい
る。

カエデは、己の姿を見おろした。

かなり露出の多い、動きやすい影水月の巫女装束。

たしかに、この武道場のようなところでは目立つ。

しかも片手には抜身の刀。

これでは、怪しまれても仕方がないだろう。

「私は、影水月の巫女。

 ヒタギを探しに参りました」

「なんで、ヒタギ様を探しているわけ?」

カエデと歳の変わらなそうな、背がやや低い方の若者
が言った。

ますますカエデのことを怪しんでいるようだ。

「何故・・・」

そういえば、どうしてヒタギを探しているのだろう。

少し考えてみたが、答えが出ない。

考え込む彼女の瞳に、ふと背の高い若者の腰に差して
ある二振の刀が映った。

カエデは、瞳を輝かせて、すぐさま若者に飛びつくよ
うにして言った。

「あなたっ!

 あなた、両刀使いなのっ!?」

「・・・ああ、そうだが?」

怪訝そうな表情をわずかに浮かべながらも、若者はま
じめにうなずいた。

「おれの質問は無視かよ!」

もう一人の若者がどなったが、夢中になっているカエ
デの耳には

聞こえていない。

「あの、私と剣術の稽古をしてくれませんか?」

「・・・何故(なにゆえ)」

「剣術の稽古がしたいからです」

「理由になっていないだろそれ」

カエデは背の低い方の若者を、キッと睨みつけた。

その迫力に、一瞬若者がたじろぐ。

「な、なんだよ」

「あなたは、今、弓をお持ちです。

 刀を持っていない。

 したがって、今すぐに剣術の稽古はできません。

 そして、今この場で刀を持っているのはこのひとし
かいないの!

 私は、剣術の稽古がしたいの!」

途中から、口調と内容がおかしくなったが、言いたい
ことが言えて、すっきりした。