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Re: 浅葱の夢見し ( No.446 )
日時: 2013/09/23 23:34
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*「…何をしにいらしたのですか。

  …………何が目的なのです」


この男は、ただの女たらしにしか見えないがうつけではない。

むしろ、カエデよりも何倍も、頭がきれる男だとカエデは知っている。

わざわざ、再び四騎ノ宮に来て、カエデに自分は秘密を知っていると脅すのも、

何か意味をもってやっているはずだ。

意味もなく、この男が動くと思えない。

こんなものでも、一応は第三皇子なのだから。


「…なにをしに、か…」


ゆらりとシキの姿が揺れる。

あっと思った時には、強い力で手首を掴まれた後だった。

見た目よりも彼の力はずっと強くて、振り払えず、

カエデはそのまま強引に引き寄せられた。


「…っ…何を……っ!」

「…そなたを、奪いに来た」


耳元でささやかれた言葉に、カエデは目を見開いた。

……奪う……?


「な……にを、おっしゃって……!?」


シキは一度、顔を離すと、カエデのあごを取って上を向かせ、瞳をのぞきこんだ。


「カエデ。


 ……おれは、そなたが欲しい」


そういうと、シキは肉食獣のような笑みを浮かべた。

だが、その目が。

紫の瞳は少しも笑っていない。

真剣な色をたたえたまなざし。

彼は冗談で言っているのではない。

これ以上はないほど—————————本気だ。


「そんな……」


シキは、カエデが『ハルナ』ではないと、本家の大巫女ではないと知っていて、

それでいてなお——————————この身を欲している。