コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.46 )
- 日時: 2013/04/02 14:10
- 名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)
*「・・・わかった」
背の高い若者がうなずいた。
「おいレイヤ!?
そいつ、巫女だぞ!?」
「・・・わかっている」
レイヤという名前らしい若者はさらりと返した。
「おれもちょうど退屈していたところだ。
・・・トクマ。
二刀でやらなければいいんだろう?」
トクマと呼ばれた若者は、首を横に振った。
「そういう問題じゃないって。
巫女を傷つけでもしたらどうするんだよ。
特におまえの場合加減を知らないから・・・」
「だから、一刀でやると言っているんだ」
「おまえは一刀でやろうが二刀でやろうがちっとも加
減のうちに
入らないんだよ!」
その後も彼は何度もレイヤを説得したが、やがてあき
らめたように
ため息をついた。
「もういいよ。
危なくなったら、おれが止めに入るから・・・」
その言葉が終わらないうちに、レイヤの姿がぶれた。
目の前で白刃がきらめき、とっさに刀をかまえるとそ
れを受け流した。
ガギインッ
速い。
そして、重い。
一瞬で距離を詰めて、レイヤが刀を振るったのだと遅
れて気づく。
息をつく間もなく、第二波が来る。
それを後退するのではなく、大きく踏み込み、低くか
がんでやり過ごすと、
三日月刀を下から突き上げた。
眉ひとつ動かさず、レイヤはその一撃をはねのけた。
だが、それは少し遅く、銀の刃が彼の頬を鋭く切り裂
き、皮膚が裂けて薄紅がにじんだ。
それと同時に、レイヤの刀も逃げ遅れたカエデの長い
髪を数本切り落としていた。
日光の下で、宙を舞うそれは銀の糸のように輝いた。
「なあ、やっぱりやめておこうぜ、レイヤ!」
あらためてトクマがそう言ったが、レイヤが既に動い
た後だった。
レイヤがすさまじい速度で、刀を振るう。
微かに聞こえた風切り音により、なんとかそれをよけ
ることができた。
頭上を刀が掠めていくのを見ながら本能的にその場を
飛びのいた。
一瞬後、ブンッと刀が空を切る音がする。
もはや隙を見つけて一撃、なんて言っていられなくな
った。
一撃一撃が恐ろしく速いのだ。
だが、見えないことはない。
ならば。
死角に回り込もうとするレイヤに向かって素早く方向
転換すると、
真正面から彼の一撃を受け止めた。
ギュイイインッ
甲高い金属音が鳴り響いた。
かすかにレイヤの目が見開かれる。
キチキチと、小さな音を立てて刃と刃がかみ合う。
不意に、すさまじい力で押してきていたのがふっとゆ
るんだ。
カエデもそっと腕の力を抜いた。
シャリンっと軽い音を立てて、二人は相手の刀から自
分のを離すと、
同時に鞘におさめた。