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Re: 浅葱の夢見し ( No.478 )
日時: 2013/10/26 20:33
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*「…やめて…ください」


「…ん?」


「…私には…こんな風に、優しくしもらう資格なんてありません」


優しくしないで。


「なのに…こんなの…ずるいです。

 …ずるい」


その優しさに甘えてしまう。

すがってしまう。

やっとの思いでそう言ったのに、シキは優しい手を離してくれなかった。

それどころか声をたてて笑った。


「そなたという娘は…まったく。

 好いている娘に優しくしないでどうしろというのだ。

 ああ、やはりそなたといると退屈しない」


愛おしそうに、シキはカエデの頬を袖でぬぐう。

きっと涙にまみれたひどい顔をしているとわかっているのに、

なぜか熱いものがあふれて止まらなかった。


「…み、ないでください。

 …ひどい顔、しているから…」


「別にかまわぬ。

 そなたは、泣こうがかわいらしい」


「ぶほっ」


こんな時だというのに、カエデはむせこんでしまった。


「…なにゆえ、ありえぬものを見るような目でおれを見る…?」


しかも、自分がいちいち甘い言葉を吐き出していることに気付いていないらしい。