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Re: 浅葱の夢見し ( No.50 )
日時: 2013/04/02 14:13
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*先に口を開いたのは、トクマだった。

「とりあえずおれが言いたいのは、おまえってすごいなってこと。

 レイヤが血、流しているの久しぶりにみたよ、おれ」

「あれは・・・」

「おくれを、とったつもりはない。

 刃をはじいた時に、かっすただけだ」

レイヤは表情を変えずにそう言うと手の甲で無造作に頬をぬぐった。

肌にかすれた紅が広がる。

「そうです。

 たまたま当たっただけだから、別にすごいとかそういう・・・」

「いや、それは違う!

 おれ剣術得意じゃないからよくわからないけど、攻撃なんて避ければいいだろ?

 それに、はじくにしても、うまくはじけばかすりもしないだろ。

 違うか?」

「・・・・・・」

見たものを射殺せそうなレイヤの視線がトクマに向けられる。

だが、彼は何も言わない。

否定もしない。

「ほら、レイヤもそうだって言ってるし・・・」

「そうだとは言ってない」

「おまえすごいし、なかなか強い!

 二刀流でやってないとはいえ、あのレイヤに傷を負
わせたんだからな!」

「は、はあ・・・」

しかし、もしレイヤが両刀を使っていたら、一瞬でや
られていただろう。

刀一振りであれだけやりあえたのだ。

このレイヤという青年は、きっと四鬼ノ宮でも有数の
剣の使い手に違いない。

影水月では負け知らずだったカエデにとって久しぶり
に味わう感覚だった。

「よし、そういうことだから・・・」

トクマは背筋を伸ばすと、満面の笑みを浮かべた。

「おまえ、うちの忍びになれ!」

「・・・は?」

「だからー、うちの忍びになろう?」

「いや、二回も言わなくても・・・」

一体、何がどうなってそうなるのだ。

忍び?

「おまえ、巫女なんだろ?

 でも、レイヤの剣術の相手できるやつなんて、そう
いない。

 巫女なんかにしておくのはもったいないじゃん。

 だから———」

「だから、なんだ」

氷のごとく、ひやりとした声が背後から聞こえた。

あわてて振り返ると、そこにはおそろしいまでに無表

情で立つヒタギの姿があった。