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Re: 浅葱の夢見し ( No.512 )
日時: 2013/11/13 20:37
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

*彼はなんとか針をかまえて、応戦しようとした。


「ああ。

 もちろん、その式神たちにも傷つければ傷つけるほど、貴様も傷つく。

 …どこまでもつか…見ものだな…?」


ピッピッと深緑の芝生に、鮮やかな紅がとびちったのがはっきり見えた。

ヒタギが、式神を避けようとして避けきれず、腕を牙と爪で傷つけられたのだ。

浅くはない傷だと夜目にもみてとれた。

深紅の血が滴り続けてる。

自分のなかで何かがふつり、と切れた。

せきをきったように涙があふれ出した。

頭がぐらぐらする。

もう無理だ。

これ以上は無理。

もう見たくない。

見てなんかいられない。

己を抱きしめ、支える腕に飛びついた。


「シキ様!!

 もう、やめて!!

 やめてください!!

 私がシキさまと共に宮へ行きますから、どうかヒタギは!!

 どうか、どうか!!!」


「…無理を言うな。

 あの男がいる限り、そなたはおれを見ない」


低く押し殺した声でシキはつぶやくように言った。

心の一部を壊してしまったかのような紫の瞳が暗い炎をまとっている。