コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 浅葱の夢見し  ( No.537 )
日時: 2013/11/26 19:56
名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)

ルート3  シキを止める




*カエデは抱きしめてくるシキの顔を見上げた。


「シキ…様…」


彼は、ただひたすらヒタギだけを見つめていた。

まるで恋い慕っているかのように。

だけど、その瞳に渦巻いているのは黒い感情。

強い強い憎しみと、焼け焦げてしまいそうな嫉妬。


「シキ様…」


美しい横顔は炎で赤く照らされていた。

血に染まっているかのように。

愛と憎しみは紙一重。

どこかで聞いた言葉が脳裏をよぎる。


「シキ様。

 …こちらを、向いてください」


それでも、彼はヒタギを見ている。


「———シキ。

 ———————————私を、見て」


彼の襟をつかんで、ぐいっと自分の方に引き寄せた。

不意を突かれたシキが、そのままの姿勢を保てず、カエデの方に前のめりになる。

見開かれた紫水晶の瞳が近い。

カエデは、ふわりと自分の唇と彼のそれを重ね合わせた。

柔らかくて、冷たい感触だった。





それは、永遠のようで、一瞬だった。




カエデはシキから離れると、まっすぐに彼の瞳を見つめた。


「シキ。

 私は、あなたをきっと好きになってみせる。

 愛せるように努力する。

 これは、私なりの誓いの証。

 だから——————」


———ヒタギは、見逃して。

—————————彼を、殺さないで。


そう言おうとしたとき、腕を強くつかまれた。