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Re: 浅葱の夢見し ( No.54 )
日時: 2013/04/02 14:17
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*「ヒタギ。
 
私、これからもここで剣術の修業をしたいの」

この重苦しい空気をはねのけるように言った。

だが、ヒタギの無表情に眉間のしわを加えた顔は変わ
らない。

「どうしても、というのならおれが相手をする。

 それでいいだろう」

カエデは首を振った。

「いろんな人とやるから剣の腕は上がるもの。

 これからも時々レイヤさんとやらせてほしいの」

奴隷巫女の分際でですぎたまねをしているだろうか。

不機嫌極まりない表情のヒタギを見てそう思った。

何故か言葉を重ねるごとに、ヒタギから放たれる空気
の温度が

どんどん低くなっている。

「おねがい、ヒタギ」

剣術は、カエデがハルナに勝っている数少ないものの
一つだ。

数少ないカエデはカエデであるという証。

それを、なくしたくない。

「・・・それがおまえの願いか」

「はい」

迷うことなくカエデは答えた。

ヒタギはしばらく黙った後、ぼそりとつぶやいた。

「・・・おまえが願うのならしかたあるまい」

「本当!?」

「ああ。

 だが、できるだけおれとやれ。

 比率は9:1だ。

 いいな」

「ありがとうございますヒタギ様。

 おれが9でヒタギ様が1の割合ですね」

「おれはそんなこと、言っていない」

「さっ、三人でやればいいでしょ!」

どうしてカエデの剣術の相手ごときでこんなにもめる
のだろう。

それほどまでに四鬼ノ宮には剣術に秀でた者が少ない
のだろうか。

あれほど武の宮とうたわれた四鬼ノ宮なのに。

「もうひとつ、巫女姫は、四鬼ノ宮の忍びには絶対に
させない」

「はあっ!?

 なんでだよ!?


 もったいないじゃん!!」

「なぜなら、巫女姫はおれの———」

カエデは、ヒタギの言葉をさえぎって笑顔で言った。

「私は巫女だから、忍びにはなれないし、なろうとも
思わないわ」

「・・・おれの話を最後まで聞け、巫女姫」

「え?」