コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.555 )
- 日時: 2013/12/08 01:12
- 名前: いろはうた (ID: jhXfiZTU)
ルート1 言霊を使う→『転送』
*カエデはシキの絡みつく腕を全力で振り切った。
ただ、ヒタギのもとへと駆けた。
風を切って走る。
髪がふわりと後ろに流れる。
覚悟はできた。
自分の身など、どうでもいい。
それよりも、ヒタギの方が、ずっとずっと大事。
一刻も早くヒタギをシキから引き離さなければ。
そのことだけが頭の中を埋め尽くす。
すぐさま追ってきたシキの手が背に迫るのを感じる。
カエデはそれにはかまわず、伸ばされた大切な人の腕をつかんだ。
この言霊は対象者と同じところにとばされたいなら、対象者に触れなくてはならない。
カエデは誰にも聞こえないように、とても小さな声ですばやく言霊をつむいだ。
『転送』
じわりと左頬が熱くなる。
銀色に輝いた髪は炎に透けているせいに見えてほしいと彼女は祈った。
鮮烈な青に輝いているであろう瞳を誰にも、特にヒタギに見られぬよう顔をうつむけた。
迫ってきたシキの指をすんでのところでかわす。
少しだけ、シキを見た。
彼はひどく傷ついたような、迷子のような顔をしていた。
カエデはシキの姿から目をそらした。
『四ツノ鬼により守られし宮へ』
口にするのは、四鬼ノ宮ノ古き名。
視界が一気に青に染まった。
気付いた時には、四鬼ノ宮の鳥居の前にいた。
ヒタギと二人で座り込んでいた。
だめだ。
たてない。
めまいがひどくて、手足にも力が入らない。
やはり、「転送」の言霊は、おそろしいほど体力と霊力を消耗する。
一人ならまだしも、二人も「転送」するとなおさらだ。
だけど、大切な彼の安否だけはなんとしてでも確認したくて、
カエデはなんとかヒタギの方を向いた。
「ひ、たぎ……だい…じょう………!?」
首に走る衝撃。
いつもならば気配で避けられるだろうけど、
今のカエデでは避けようも気配の察知のしようもなかった。
傾く視界に、ヒタギの手がゆっくりと自分の首から離れていくのが見えた。
ヒタギ、どうして—————————?
問は言葉にならず、意識は遠くなる。
最後に、一切の表情を浮かべないヒタギが冷たい月光に照らされて見えた。