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Re: 浅葱の夢見し ( No.88 )
日時: 2013/04/02 23:11
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*あなたの腕の中で


狂ってしまいそうになる。





いっそ


狂ってしまって


あなた以外のすべてを忘れてしまえたら




どんなにいいだろう





*「おまえに、たのみがある」

もう何度目になるか覚えていない二人きりの夕餉(ゆうげ)の時間。

ヒタギは箸をおくと、唐突にそういった。

「どうしたの?」

今まで、そのようなことを言われたことがなかったので、

カエデは首をかしげながらそう言った。

「明日、帝やその親族が、四鬼ノ宮に来ることは、知っているな」

「う、うん」

四鬼ノ宮は、この国でも有数の神社。

帝の一族でさえも、時々訪れるらしい。

「そこで、お前に舞を披露してほしい」

「舞!?私が!?」

「ああ」

まじめな顔でヒタギがうなずく。

カエデは、あわててぱたぱたと顔の前で手を振った。

「無理だよ!

 私なんかが舞っても・・・。

 四鬼ノ宮にも、巫女はいるでしょう?」

「いるはいる。

 だが、ここにおまえにまさる巫女はいない。

 おまえにだからたのみたい」

カエデは言葉を失った。

影水月にいた時は、奉納の舞など、舞なら一通りのものはやった。

だが、それはどれもハルナのには、遠く及ばないものばかりだ。

「私で、いいの?」

「おまえ以上の舞を舞える者などここにはいないだろう」

カエデの舞を見たことないくせに、彼はやけに自信たっぷりだ。

その自信に少し、勇気が出た。

「じゃあ、私その話、受けるよ」

笑顔でそう言ったが、ヒタギの顔は晴れない。

というよりも、不機嫌そうに見える。

「まだなにかあるの?」

「・・・いや、いい」

(変なヒタギ・・・)

カエデは首をさらにかしげながらも、食事を終えたのだった。