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Re: 浅葱の夢見し ( No.96 )
日時: 2013/04/05 14:13
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*カエデは、じっとその後ろ姿を見た。

ゆったりとした衣に身を包んだその人は、ただ藤の花を見ているだけのようだ。

「どうした?」

カエデはびくりっと震えた。

「このおれに、何か用か?」

そう言うと、その人はけだるげにこちらをふりむいた。

顔から血の気が引くのがわかった。

完全に気配を消していたのに、存在に気づかれた。

「あ、あなた、誰ですか!?」

そう言うと、その人は少しだけ目を見開いた。

闖入者は、すさまじい美青年だった。

陽光の色をした短めの金髪はつやつやと輝き、まつげはけぶるように長い。

けだるげな光を宿す瞳は宝石のような紫。

「・・・そなたは、四鬼ノ宮の巫女か?」

「違います!

 ・・・いや、そうです」

今は、四鬼ノ宮の奴隷巫女のような存在だからそう言わないといけないだろう。

「へえ・・・おれが誰だか知らない者がここにいるとは。

 いいだろう。

 教えてやる。

 おれの名は、紫綺だ」

「し・・・き・・・?」

・・・どこかで聞いたことのあるようなないような名前だ。

その時、カエデの視界に、シキという男が身に着けている薄い紫の衣が目に入った。

最も高貴な者にしかまとうことを許されない紫。

「もしかして、帝の親族の方でしょうか?」

「さあ、どうであろうな」

そういうと、かれはあくびをした。

言うことやること全てだるそうな男だ。