PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.99 )
- 日時: 2013/04/06 13:35
- 名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)
*「何しに、四鬼ノ宮にいらしたんですか?」
「そなたたちの言う、神々への宴、というものに参加するためにここにきた。
だが、退屈だからここにいる。
神への祈りより、この藤の方が見ている分にはよい」
その言葉に巫女であるカエデは顔をしかめた。
思わず、どなりそうになったが、どこかさびしげなシキの横顔を見て、言葉を飲み込んだ。
つられたように彼女も藤の海を見てみた。
一面の風に揺れる薄紫。
「私はそうは思いません」
シキは顔だけこちらに向けた。
「何がだ?」
「私は、藤も、人の祈りも、どちらも美しいと思います。
藤は、はかない命を散らして咲き乱れる。
人も、はかない人生の一瞬を使って心の底から神に祈るのです。
だから、どっちの方がきれいかどうか、比べられません」
シキはしばらく黙っていたが、再び藤に視線を戻した。
穏やかな空気が二人の間に流れる。
「そなた」
カエデはシキの顔を見た。
「おもしろいな」
「・・・・・・」
おもしろい、などと言われても、まったく嬉しくない。
「このおれに意見して、納得させた女は、そなたが初めてだ」
「・・・誰と比べているのか知りませんけど、全然嬉しくないです」
「褒めているんだ。
素直に受け取っておくがよい」
カエデの眉間にしわがよる。
いちいち上から物を言うのが、頭にくる。
PR