コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 臭いとしか言いようが無い ( No.39 )
日時: 2013/02/21 19:49
名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)

俺は今、モップ片手に学校のトイレ掃除をしている。
臭い。とにかく臭い。牛乳と卵と納豆を混ぜて一ヶ月放置したような臭い。
まあ、言ってみれば生ゴミの臭いってことだが。

ところで、ウチの学校のトイレの個室には、絶対に入ってはいけないというタブーがある。
いや、幽霊が出るとかじゃないが、臭いがひどい。
ちょうど今俺が匂っている臭いの三十倍ぐらいだとか。
多分そこがこの臭いの本なんだろうな。

「なあ照明、本当に臭いのか?此処」
後ろから俺の同級、五十嵐太一イガラシタイチが話しかけてきた。
こいつは、鼻詰まりがひどいのか鼻がつぶれてるのか、臭いにかなり鈍感。
「だが、カレーの匂いはすぐ分かったり・・・よくわからない奴だ。
「あのなあ、此処は本当に臭いって。生ゴミみたいな臭いがする」
「そうじゃなくて、何で此処でそんな臭いがするかってことだよ。
 お前、生ゴミって言ったろ?何で此処で生ゴミの臭いがするんだよ?」
・・・確かに。ここはトイレ。生ゴミの臭いがするわけが無い。
あ、言い忘れてたが、太一は成績優秀。常に冴えてる。
「ま、どうでもいいことだけどな。俺には臭わないから!」
太一がモップを振り回し、機嫌良さそうに言った。
「お前に臭わなくても俺には臭うんだよ!」
「いいじゃん、もう。下手に調べようとして倒れたらどうすんだよ。
 かなりおっそろしい臭いらしいし。毒物かもしれないしな」
う、説得力がヤバい。確かにあのタブーのドアを開けた瞬間、
俺の意識が飛ぶのは目に見えたことだ。
「とりあえず、掃除しようぜ、掃除」
「そ、そうだな」
太一が洗剤の入った容器を手に取り、便器を擦ろうとする。が、
「あ、洗剤切れてら。悪いけど洗剤補充しに行ってくる」
と言ったかと思うと容器に洗剤を入れてもらいに行った。
す、素早い。てか廊下走っていいのかあのスピードで!



あっという間に太一は目の前から消えた。
太一が走っていった廊下を眺める俺は、
悪臭がさらにひどくなっていることに気がつく。
「くっさ!!何だよこの腐りきった臭い!!」
ドブ川に納豆、いや腐った生ゴミを捨てたような臭いにまでなっている。
「こんなとこで掃除できるか!!鼻がもげるわ!!」
「騒がしいねえ。僕のティ〜タイム☆を邪魔しないでくれ」
モップを床に叩きつけた俺の背後から声が聞こえた。
それとともにタブーの個室のドアがゆっくりと開いた。


Re: 臭いの本の妖怪 ( No.40 )
日時: 2013/02/26 19:15
名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)

ドアが開いた、いや開けられた途端臭いはさらにひどくなる。
俺の背後には臭いだけでなく、妙な空気もただよっていた。
一言で言うと「妖怪の気配」。生身の人間じゃないと分かる、特徴的な気配だ。
説明するのは難しいが、実際に妖怪と対峙すれば分かる。
あ、こいつなにか違う、とかそんな感じだ。


しかし、後ろの奴が妖怪だとわかっても俺はまだ振り向けずにいた。
この臭いの元凶がアイツだとすると、後ろを向きアイツの姿を見た瞬間、俺の鼻は潰れるのは避けられない。
そこまでいかなくても恐ろしい臭いに苦しめられる。


それがどれだけおっそろしいことかは分かるだろう。
コーラを飲んで臭いが無いのがどれだけ恐ろしいか!!
あの甘味と酸味と炭酸の味わいが無くなる!?
ふざけんなああああああああああああ!!!
妖怪退治よりコーラ優先!コレは譲れない!!



・・・というわけで、俺は振り返らずにトイレから出る。
トイレの中が臭すぎたせいか、外の空気が美味い。
「おいおいおい!!テメーなんで無視すんだよ!?
 俺達の方を向けよ!!こんにゃろう!!」
あれ、さっきの声と違うな。なんだかとても威勢がいい。
妖怪は2匹いるらしい。まあ、どっちにしろ無視。
「まあまあ♪そんなに怒ることもないさ♪
 きっとあの子はノーズ☆が潰れるのが怖いのさ♪」
あ、始めの声。そういやこの声どっかで・・・。気のせいか?
「ノーズだかノースだか知らねぇが、無視する奴は気に喰わねえ。
 ワリぃが先手を打たせてもらうぜ!」


声が聞こえた途端、俺の背後に飛んでくる妖怪の気配を感じた。
その直後、妖怪は俺の左肩をかわし、トイレの前の手洗い場に突撃した。
硬い蛇口がいとも簡単に崩れ去る。まるで粘土細工のように。


崩れ落ちた洗面台に誇らしげに佇む妖怪が見えた。
体中に茶色い羽毛があり、足には水かき、そしてクチバシは平たい。
そう、カモそのものだった。
ただ、頭にバケツ、背中にスッポン(清掃用具の方)という妙な格好をしている。
てかこの状況かなりやばくないか?
硬い蛇口やら台やら余裕で壊す奴だぞ?
俺にその矛先が向けられたら、簡単に葬られる。

「こんにゃろう!よくもスルーしてくれたな!!
 どうなるかわかってんだろーな!!」
妖怪の目が怒りで燃えてるんですけどおおおおおお!!!
やばいよ?怖いとか以前に恐ろしいよ!!
何もしてこない奴は怖くないけど!!


俺がビビッている間に、もう一匹の妖怪もトイレから出てくる。
ひどい臭いが再び俺を襲う。どうやらアイツが臭いの本みたいだな。
なんてのんきに言ってる場合じゃないよな?やばすぎる。


スウーッと滑るように俺の前に現れたソイツは、
俺の見たことがある妖怪だった。






「ナルシ雑巾!?」

Re: 困ったときの救世主 ( No.41 )
日時: 2013/02/26 20:58
名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)

「そうだよ♪ナルシ雑巾じゃなくてファウストだけどね♪」
このひどい臭い。そしてあの得意げな顔。
大掃除のときに見た奴と全く同じだった。

「お前、あの時消えたんじゃなかったのか!!」
そう、あの時あいつは、エビフライにぶちのめされたはず。
てっきり成仏したんだと思ってたが・・・。
「ふふふ☆あのくらいでこの僕がやられるとでも?」
いやでも、エビフライに瞬殺されてたよね?
そりゃあ、あんだけやられて耐えられたのも凄いけど。

「そしてその時の復讐をするため、此処で一ヶ月待ち伏せしたのさ♪
 此処なら邪魔なフライもいないからね♪」
ああ、そういや此処が臭くなったのも先月だな。
初めにトイレに入ろうとした野球部の奴が失神したとか。
よほどの臭いだったんだろうな。

「俺も復讐するために此処に来た!!
 この辺りにはネギ畑がねぇんだ!!お陰でこのザマよ!!」
あのカモっぽい妖怪が怒り心頭状態で言う。
それで、スッポンなんか背負ってるのか。
てかそれ復讐も何も無いよな?人間関係無いよな?
「紹介するよ♪フレンド☆の軽之助君だよ♪」
おそらくナルシ雑巾にそそのかされたんだろうな。
ったく雑巾の奴もさらに面倒なことにするなあ。
軽之助は多分かなり強い。下手したら殺される。
「どう?諦めて僕のマイホーム☆を返す気になったかい?」
あ、まだ根に持ってたんだな。しかもマイホームじゃないし。




「・・・ってかお前ら俺一人じゃ何にも出来ないと思ってるのか?
 残念だが多分ソイツは外れだ。お前らなんか速攻でぶちのめしてやるよ!!」
俺にはまだ、奥の手がある。あいつらを瞬殺できる、秘密兵器が。



「・・・エビフライがな!!!」
「「は?」」


妖怪たちが白けた目で見てくる。
妖怪にそんな目で見られるようなこと言ったの?え?
「まあいい。俺は式神のエビフライを召喚できるんだよ!!
 急急如律令!!
 我と契りを結びし者よ!今此処に現れ我が力となれ!!」

俺は式神召喚の呪文を唱えた・・・はずだが落ちてきたのは紙1枚。
ん?なんか書いてある。
「何々?『彼女とデートに行っています』?
 ふざけんなあの馬鹿フライが!!」
俺は紙切れをビリビリに破く。こんなときに限って!!
いつも暇なときは地獄の特訓をさせてくるのに!!

「アハハハハ☆これで僕たちの勝ちは決まったね♪」
あの、ナルシ・・・じゃなくてファウストさん、
めちゃめちゃ恐いんですけどおおおおおお!!!

だがッまさ負けが決まった訳じゃない!!
今から妖怪退散の呪文を唱えれば・・・。
「急急如「うっせえぇぇぇ!!!」

軽之助が猛スピードで突っ込んでくる。
ちょっと途中で呪文止められたよ!?こんなのアリ!?
やばい。これまともに喰らったら・・・。
「うわああああああああああああ!!!」





「私の照明君に手を出すなぁ!!」
ヒュウッと寒い突風が吹き、軽之助、そしてファウストの周りが凍りついた。
そしてそこに現れたのは白い着物に青い帯。
真っ白な手をした・・・みぞれだった。

「照明君、大丈夫?怪我してない?」
「ああ、大丈夫だ。って私のって・・・。」「気にしない気にしない!」
なんかかなり心配だ。勝手に彼氏にされてる気がする。
話し方も敬語からかなり軽くなったし・・・。

「でも、妖怪逃がしちゃったね」
氷の方を見ると、中には誰もいなくなっている。
臭いは消えてるから別にいいが。

「あ、助けてくれてありがとな。かなり危なかった」
見るとみぞれは顔を赤らめている。
必死で隠そうとしているが見え見えだ。

「わ、私は・・・当然ことをしただけだよ」
俺の方を見るその目は輝いている。
さらに勘違いされてるな、これは。



「たっだいまぁぁ!」
みぞれが俺に抱きつきそうになったその瞬間。
陽気な声で太一が帰ってきた。助かったぁ。
「遅れてごめん。廊下走ってたら先生に怒られて・・・」
「それでそのテンション!?いろんな意味で凄いわお前」
俺が話してる間に、みぞれはどこかに行った。
某巨大ヒーローのタイマー的な感じか?
多分違うと思うが。


「そう言えば蛇口とか洗面台とか崩れてたけど?」
やばい。まさか妖怪のこと言う訳には行かないし・・・。
「まるでなにか尖ったものが衝突したみたいな感じ。
 すっごいスピードで。
 もしかして照明が怪物と戦ってそれで崩れたとか?」
冗談っぽく太一は言うが、俺は苦笑い。
なんたって半分ぐらい当たってるから。




・・・その後、先生に問いただされたりと色々大変だった。
そして俺の変な噂が学校中に広まることとなった。