コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 式神と術者は一心同体 ( No.44 )
- 日時: 2013/06/29 20:02
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)
「ハァハァ、毎度の事だがいい加減にしろよエビフライ!」
俺は今、20キロという殺人的な距離をあの揚げ物野郎によって走らされている。
20キロというだけなら簡単だが、走るとなると息が止まりそうになるぐらい苦しい。
やってみろよ、20キロのランニングという名のマラソン。
死ぬぞ? 本当にだぞ?
「なに言ってるんですか。そんなことずっと言ってたら塩酸ぶっかけますよ」
「いや塩酸はやめろ。劇薬じゃねーか」
「じゃあ水酸化ナト「だから毒薬をやめろって!」
「わかりました。ではこれでいいでしょう。
"ふざけたこと言ってると二度と動かなくしてあげますよ(黒笑"」
「もっと恐ろしくなったじゃねーか! しかも最後の黒笑ってなんだ!?
思いっきり狂気に染まってるだろお前!」
「はいはい、足が止まってますよ」
エビフライが尻尾をしならせる。と、それと同時に俺は背中に衝撃を感じ、前に倒れた。
「ぐぁはっ!痛ェ・・・・・」
「衝撃倍化の術です。それにしてもこの程度で倒れるなんて・・・。
妖怪相手に勝てるはずが無いじゃないですか。今度倒れたら承知しませんからね」
エビフライの承知しないは本気だ。下手したら無理やり青酸カリを飲まされる可能性だってある。
絶対に転ばないようにしなければ・・・。絶対に、絶対にだぞ!
「うわ、ちょ、やめ、ぎゃあああああ」
その直後、俺は足に何かが絡んで転倒した。
「承知しないって言ったはずですよね・・・」
「いや、ちょっと、やめろよ」
「自分が勝手に転倒フラグ立てるから悪いんでしょう」
倒れた俺の上でエビフライが浮かんでいる。
ああ、なんかエビフライが歯医者に見えてきた・・・。
泣く子の声のようなドリル(?)の音・・・。
「ううぇぇぇん。ひどいよ・・・」
ん、これって本物の泣く声だよな。
これにはさっきまで狂ったような笑顔を浮かべていたエビフライも驚いたようで、声がする方に目を移した。
「牙狼さんじゃないですか。どうしたんですか?」
「ひどいよ・・・。僕を蹴ったりして・・・」
「ああ、ご主人がさっきそのようなことを・・・。申し訳ありません。
あとで、きつく叱っておきますので。
(この後、揚野照明はエビフライがおいしくイタダキました)」
「なんだよそのおいしくイタダキましたって! 怖いわ!」
「ご主人はほっといて・・・、牙狼さん、浩介さんはどうしたんですか。
式神がいるということはその主人がいるということ。それがいないなんて・・・」
「実はね、浩介くんが、お前なんかいらないって・・・」
- Re: 式神と術者は一心同体 ( No.45 )
- 日時: 2013/09/16 05:35
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)
「はぁ? 浩介の奴前々から嫌な奴だとは思ってたが。
まさかこれほどとは……」
自分の式神にそんなことを言うとはな。
まあ、俺もエビフライにしょっちゅうひどいことを言われているが。
「違うんだよ、そうじゃなくてっ!うわああぁぁん」
牙狼が急にあせって泣き出す。いったい何故……」
「——って痛!」
またもやエビフライが尻尾をしならせる。
「話をややこしくしないでください。
あなたにはデリカシーの『デ』の字も無いんですか」
俺を向かってそう言ったかと思うと、
急に表情を変えて牙狼の方を向いた。
「何があったんですか。詳しく聞かせてください」
「うっうっわかった。実はね、浩介君が送り狼に襲われて、
お前だけでも逃げろって。
それでね、主人を置いて逃げるなんて出来ないっていったら、
『お前なんかいらねぇよ! さっさとどっかいけ!』って」
「なるほど、いい主人ですね。暴言を吐いたのも、あなたにだけでも
助かって欲しいっていう親心でしょうし。
どっかの誰かさんと違っていい人ですね」
心なしか、最後、エビフライの目線が俺に向いた気がする。
その直後、エビフライの顔が真剣になった。
「そうときまったら、いそがなくては。
源蔵さんにも連絡を入れておきましょう」
この場にいる全員から余裕が消え、あせりが増していった。
- Re: 式神と術者は一心同体 ( No.46 )
- 日時: 2013/09/29 20:39
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)
「もしもし、揚野照明だ。源蔵の爺さんか?」
俺はエビフライに言われて、源蔵の爺さんに電話をかけている。
早めに行かなきゃならないのになんでこんなことを?
エビフライ達は先に霊気がする所を見つけたから行ってみると言って、
俺を置いてどっかにいっちまったし。
「ああ、源蔵じゃが。おぬし、どうしたのじゃ?」
「実はだな———」
「なるほど、送り狼。ならば、駅前の竹林に行くといいじゃろう。
浩介君にはそこにいる虫妖怪の駆除をお願いしたのじゃが。
そこには送り狼までもおったとは」
なるほどな。それで妖怪の縄張りに足を踏み入れてしまったのか。
「なあ、さっきから気になってたんだが、送り狼って何だ?」
「なんじゃ、そんなことも分からずにいっとったのか」
「ほっとけよ」
全く、この爺さんはいつも一言多い。
「まあまあ、そう言うことも無いじゃろう。
送り狼というのは、狼の生きているときの怨みの念と自然の気が混ざり合って出来た妖怪じゃ。
まあ、詳細は言ってみればわかるじゃろ」
なんと無責任な。まあいい、駅前の林に行くとするか。
俺は、そこまでの道を走り出した。
- Re: 式神と術者は一心同体 ( No.47 )
- 日時: 2013/09/30 20:18
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: Ug45cB3V)
俺が竹林に着くと、エビフライはこちらを静かに振り返った。
「ご主人、遅いですよ。こっちも大変なんですから」
エビフライはそう囁くと、竹林の木々の間を覗いた。
そこを見てみると、浩介が硬直していて、その周りにはチャンスを窺うように群がっている狼たちの姿があった。
「おい、エビフライ何で早く助けに行かないんだよ」
どう考えてもおかしい。エビフライの実力なら、あれくらいすぐ倒せそうだ。
なのに、エビフライはじっと相手の様子を窺っている。
「しっ。声が大きいですよ。
それに今助けに行っても、浩介さんが襲われるだけですって。
送り狼は、ああやってチャンスを見計らって、
相手に隙が出来たりした瞬間襲い掛かるんですよ。
しかも、あの数。ざっと20匹はいます。
あいつらを一発で全て倒せると思いますか?
一匹でも残ったら浩介さんが襲われるんですよ」
く、話が長い。まあ、今助けるのが良策では無いのはわかった。
浩介が動かないもそういう事だったんだな。
なら、もう少しチャンスを見計らうか。
しばらくして、浩介の目線がこっちに向いた。
どうやら、俺達に気付いたようだ。
そして、エビフライはと言うと、浩介に必死でジェスチャーをしている。
浩介もしばらくは、ハァ?という顔をしていたが、
何回もエビフライが繰り返すにつれ、意味も分かったようだった。
まあ、俺には一mmと10秒も意味が分からないが。
「では、行きますよ」
「任せろ」「う、うん」
俺達は互いに声を掛け合って、竹林の中に突入した。
「衝撃倍化!」
エビフライが尻尾をしならせると、送り狼の半分が衝撃とともに吹き飛んだ。
その間に浩介は体勢を整え、俺は送り狼たちにハバネロエキスをぶっかけた。
「ウオオオオオーン!!」
林には牙狼の遠吠えも響き渡り、その声に他の狼達も威圧された。
ただの弱虫かと思っていたが、なかなかやる。
「騒音地獄!」
そして浩介が俺の見たことの無い術を使った。
俺達には全く聞こえないが、送り狼達には効いているのか、
肉球で耳を抑えて、もだえ苦しんでいる。
逆に相手が可哀想にになってくる光景だ。
いつのまに浩介はこんな術を覚えたんだ……。
「て、撤収だ!」
一匹のリーダー格のような狼がそう言ったかと思うと、
あの群がっていた狼達は林の奥に消えていった。
- Re: 式神と術者は一心同体 ( No.48 )
- 日時: 2015/02/11 15:50
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: xCJXbGYW)
「とりあえず追い払いましたけど……」
エビフライが顔を歪ませる。
「ん?どうしたんだ?」
「いえ、実はあの手の輩は馬鹿みたいにしつこいんですよ。
ええもう、本当に糞みたいに。さっさと成仏すればいいのに」
エビフライがえげつなく吐き捨てる。
おい、どうした。口が悪いぞ。式神がそんなことでいいのか。
まあいつものことだが。
「なんか……ありがとな」
浩介が目をそらしながら呟く。
「何言ってんだ。お前は仲間でもなんでも無い奴だが、良いとこあると知ったからだよ」
「アア?何だその言い草は?喧嘩売ってんのか?」
「お前こそ、助けられといて何だよ。これでも一応褒めてるんだぞ?」
「お生憎様。ついでに言うと、術かけられても文句ないな?」
「そうか、上等だ。塩酸ぶっかけて———ぐわはっ」
俺はエビフライの尻尾によって衝撃を受けた。
多分震度で言うなら6ぐらいの衝撃だぞ、本当に。
「いい加減にしてください。どれだけ醜態見せれば気が済むんですか」
「おい、それならあいつだって……ちょ、おま……。やめ……」
エビフライは俺を縄で縛り、ズルズルと引きずっていく。
強制お説教ターイム♪と言ったところか。
——なんていってる場合じゃねぇ!
「おい、エビフライ!いったいお前!何を」
「何って火責め地獄ならぬ唐辛子エキス地獄にお連れするだけですが?」
おい、唐辛子地獄って……。絶対こいつのことだから、目に流し込んだり、口に入れたりするんだろうな。
まあ、狼共にハバネロかけてた俺が言えないが。
ん?何か刺激臭が。まるで唐辛子を濃くしたような。
「——まさか!ちょ、エビフラ、やめ……ぐわああああああああ!!」