コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺の式神がどうみてもエビフライなんだが ( No.59 )
- 日時: 2013/12/29 11:49
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: NINBOsI.)
遭難した。大事な事だから2回言う。遭難した。
同じような樹木がどこを見ても生い茂っている。
一面に降り積もった落ち葉は乾いた音を立てる。
遠くから獣の声のような音が聞こえ、必要ないほど恐怖心をえぐられる。
木々の隙間から木漏れ日が差し込んでいるのが唯一の救いで、
もし真夜中だったなら此処で首を吊っていただろう。
「なあエビフライ、此処は何処だ?」
俺の冷や汗が滴り落ちた。
「知りませんよ。自分がランニング中に道に迷うからでしょう」
エビフライの冷たい視線が俺に突き刺さる。
さっきからずっとこれだ。修行の一環とか言って、まともに取り合ってもらえない。
死んでしまったら元も子も無いと思うんだが。
「あ、そうだ! 転移の術を使えば——」
「無理ですね。転移の術は行きたい場所の距離と方向を知っている必要があるので」
俺は地面に崩れ落ちた。嫌な汗は更に量を増す。いったいどうすれば——。
焦りでぐるぐる回る俺の目は木々の間に人影を捉えた。
即座に地面を蹴り、叫ぶ。
「すみませーん、道に迷ったんですけどー、此処って何処——」
俺の言葉は「あっ」という声とともに途切れた。
夢中になって土の中の虫を食べている少女という異常な光景が目に入ったからだ。
少女の方も少しの間熱心に腐葉土をあさっていたが、
やがて少女からも「あっ」という声が漏れた。
「どうしよ、人間に見られちゃったよ」
少女はそう呟くと、裸足のまま想像できないようなスピードで森の奥に消えていった。
俺はしばらく口を大きく開けていたが、
「何をしてるんです?道をきくんじゃなかったんですか?」
というエビフライの声で我に返った。
「そうだ! 道だ、道! あいつに訊かなきゃ——」
もう妖怪とかどうとかどうでもいい。
とりあえず道を訊いて此処から脱出する、それだけだ。
俺は少女が消えた方向へ走った。
「何処に行こうとしているんですか!? 危険ですよ!」
エビフライの心配の声をよそに俺は足を動かし続ける。
何もしないよりはマシなはずだ。そう自分自身に言い聞かせる。
「——仕方ないですね。危なくなったら助けるので、安心して走ってください」
ため息とともにエビフライが隣につく。
「わかった」
短く答えると、常備しているコーラの栓を開け、飲み干した。
そしてまた、森の奥に向かって駆け出した。