コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺の式神がどうみてもエビフライなんだが ( No.83 )
- 日時: 2015/02/12 20:10
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: xCJXbGYW)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
1本だたらが逃げ去ってからしばらくしてから、ウルシが目を覚ました。
「・・・・・・お兄ちゃん? イナゴは? あの脂がのってて美味しそうなイナゴは?」
こいつこの後に及んでまだそんなこと言ってやがる。人の苦労も知らないで・・・・・・。
「イナゴはいないよ。今忙しいから、また後でね」
ソラは壊された研究素材を直しながら、適当に答えた。まず備品を直すべきじゃないのか・・・・・・。
ウルシはがっかりしたように周りを見渡すと、俺達に気づいた。
「あ、さっきの人・・・・・・、と巨大なイナゴの油揚げ!」
ウルシはそう叫んだかと思うと。エビフライに飛び掛る。
エビフライが食べ物に見えるその気持ちはわからんでもない。実際美味しそうだし。
タルタルソースやらとんかつソースを飛ばすのは食べてくれと宣伝しているとしか思えない。
が、それは食べる側の話。食べられる側、つまりエビフライは嬉しいわけが無い。
「ちょ、待ってください! 私食べても美味しくないですから!
このタルタルソース賞味期限切れてますから! やめて! 食べないで———」
エビフライは絶叫をあげながら逃げ惑う。ざまあみやがれ。
日ごろ、カップラーメンに漬かったり、ソースを飛ばしたりしてきた報いだ。
これに懲りたら二度と美味しそうにならないように。コーラも禁止しないように。
エビフライとウルシがいちゃいちゃしてる間に、ソラに帰る方法を訊くことにした。
「なあソラ、俺達帰れるの——」
「豆腐でも食べてればいいんじゃない」
即答。ソラは作業中で、適当に答えた。俺はセリフを最後まで言い切ることすら許されないのか。
「あの、帰る方法——」
「豆腐食べたら?」
こいつは、何を、言っているんだ・・・・・・。
なんで帰る方法を尋ねると豆腐を食べるという回答が帰って来るんだよ!
リアクション芸人がこの世に絶望して首を吊るレベルの返しだぞ今の。
「おい! 話聞けよ——」
俺はそのとき、ソラの肩をゆさぶって話を聞かせようとした。
・・・・・・・はずだったんだ。
「豆腐食べろ!」
その言葉とともに俺の口には木綿豆腐が高速で入ってきた。そう、まさに弾丸のように。
醤油もすでにかけているらしく、舌触りといい、味わいといいとても美味しい。
まさにこれは、味の宝石箱やー!
だが、作業中とはいえ、無視されるのは哀しい。とても哀しい。
家に帰れないのも哀しい。とても哀しい。
もう一度話しかけてみるか・・・・・・。
「お——」
「豆腐!」
俺が単語を言い切らないうちに、俺の半径1メートルに豆腐が山のように降ってきた。
俺はその豆腐の数々に埋ってしまった。
よく見ると、ご丁寧にそのひとつひとつに製造者名と消費期限が書いてある。
さらに、ソラの適当さを証明するように、豆腐の山には所々にパック詰めの豆腐が点在している。
上のほうには油揚げも混じっているし、豆乳までかけられている。
これだけの術を一瞬で使うとは、守り神ソラ、恐るべし。
さすがにこれだけの豆腐が降ってくれば、エビフライも気づく。
背後のウルシを避けながら、心配そうにソラに声をかけた。
「あのーうちの主人が埋っているようですが・・・・・・」
エビフライの声が聞こえると、ソラは我に返ったように振り返る。
「あ! ごめん! 豆腐かけすぎちゃった! で、空腹は収まった?」
ソラがニコニコしながら豆腐を消滅させ、俺に訊いてくる。
「・・・・・・俺はただ、どうすれば家に帰れるのかと訊いただけなんだが」
疲れた顔でそう言う。お前にはどう聞こえてたんだよ・・・・・・。
「え? 腹減ったって言ってたんじゃないの? うるさいなーと思って適当にあしらってたんだけど。
まあいいや。帰る方法だね? 事務所の術式破壊されてたから多分すぐ帰れると思うけど?」
「つまり転移の術でも大丈夫ということですか?」
「うんそうそう」
ソラは笑顔のまま答える。俺は何のために豆腐に生き埋めになったんだ・・・・・・。
エビフライがため息をついた。
「仕方ありませんね。今日はもう暗くなってきましたし、私が転移させましょう」
良かったー。これで家に帰ってあったかいおこたに入れるー。
「・・・・・・実践訓練もできましたしね」
エビフライが小声で呟いた。
何故か、その目がとても嬉しそうに見えた。
・・・・・・もちろん、ウルシから逃げおおせるからだ。