コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 全世界のバカ共に告ぐ!※参照2500突破!! ( No.180 )
- 日時: 2013/09/02 14:01
- 名前: 郁汰 ◆8EiAzCHuJ2 (ID: 1kYzvH1K)
「はああああああああああっ!?」
朝早い時刻という事も忘れて、思いっきりシャウトする俺。
「…お前、この前道端でぶつかってきた男だろ?」
突然の宣告に声も出ず、ブンブンと頭を縦に振る。
「まさか人気絶頂のアイドルの体に傷をつくろうとしたなんてな。お前が初めてだよ」
いやいやいやあの時オマエ思いっきり中学生だったじゃん!!思いっきりチンピラだったじゃん!!
体に傷つくられかけたの俺だから!!!指ちょんぎられかけたの俺だから!!!
「わ、ワザとじゃなくてですね…」
それらの言葉を全部呑み込み、引きつった笑みを浮かべて言う。
「その当人がこの学校の生徒だったんてよォ…世の中案外狭いモンだな」
フリフリワンピースにバッチリメイクには似合わないような口調で、ヤツが呟いた。
「…簡単な“アナグラム”だよ」
「あな…?」
「文字の順番を並びかえて、別の意味にする遊びのコト」
ショウが、半ば呆れたように笑って言う。
「へー、よく知ってるね。おにーサン」
不敵に笑いながら、ヤツはピンクのハンドバッグからメモ帳とペンを取り出した。
正直キレイとは言えないような字で、サラサラと紙面に文字が乗せられていく。
「シッキー、もとい俺様の芸名・『庭織色雅』を全部ひらがなにしてみると———…」
に わ お れ し き が
↓
に し き が わ れ お
「うあああああアアアアアアァァァァァァァー!!!」
そこまできて、俺はやっと気がついた。
認めたくない認めたくない認めたくない認めたくない断じて認めねェェェェェェ!!
だって、だってだよ!?
『庭織色雅です!桜庭高校のみんな、よろシッキー★』
———…あんな笑顔を振りまく美少女が、
『次こんなマネしてみろ…お前の指一本ずつ切り落としていくからな』
———…あんなドスの聞いた声で恐ろしいこと言ってんだよ!?
「ちょ、ちょちょちょちょっとタンマ!」
静まり返った空気の中で、思い切って切り出す。
「って事は錦川…オマエ、本当は…お、女?」
「あ゛ぁ?男に決まってんだろ。樫丘中学2年だよ。目ン玉ひんむいてよく見ろクソが」
いやもうすでに驚きで目ン玉ひんむいてるよォォ!!乾燥してガッサガサだよォォォ!!!!
ってか樫丘中って俺の出身校だし…
「…どーりでテレビで見たときからニオイがすると思ってたんだ」
「…あら、この香水の香り、お好みじゃなかったかしら〜♪」
ショウと錦川の間に、黒い空気が流れ始める。
え?なに因縁の決着みたいな雰囲気になってんの!?二人とも初対面だよね!?
「——————っま、とりあえずこの事は内密に。バレたら騒ぎになるから、口止めしただけだし」
カツラを被り、リボンを結い直しながら、錦川が言う。
それに…
母ちゃんのためにも、今失脚するワケにはいかねーんだよ。
「え、今なんて…」
かすかな呟き声が聞こえた気がして、思わず聞きかえす。
錦川はそんな俺の言葉を華麗にスルーすると、勢いよくハンドバッグを担いだ。
「口外したら…アナタ達まとめて血祭りに挙げちゃうから♪」
背越しにヒラヒラと手を振るそのうしろ姿は。
皮肉にも、“頂点に君臨したアイドル”そのものだった。
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