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- Re: 全世界のバカ共に告ぐ!※未奈美ボイス公開!! ( No.245 )
- 日時: 2014/06/10 21:33
- 名前: 郁汰 ◆8EiAzCHuJ2 (ID: QqBG3WgT)
「テメェ、もしかして“紅い殺人鬼”—————…否、
“ショウ=シュヴェルツェ”か」
「…え?」
真っ先にそう反応したのは、当人のショウではなく、俺だ。
「ははっ、おじさん、俺のコト知ってるの?」
…もうココまでくると表情というか、一種の“仮面”である。
相も変わらずニコニコニコニコ、表情の一つ崩さずに、ショウはデブヒゲに問いかけた。
「ハッ…シラ切りやがって…どこぞの密偵かぶれ様よォ」
「かぶれとはヒドイなあー。コレでもちゃんとお仕事してるんだけど」
『今も、ね』とショウが付け足す。
「まさかこんなトコロでお会いするとはなァ…世の中、いや宇宙は狭いこった」
「俺もこんなド田舎の星で同胞に出会うとは思ってなかったよ」
ケラケラと楽しそうに笑うショウ。
夕方、日の暮れ。
閑静な住宅街の裏路地。
地面に突っ伏したままの高校生と、それに見合わぬヤクザ二人組と、派手な赤髪をした男がひとり。
そんな非日常過ぎる情景に、ヤツの笑い声はあまりにも不釣合いだった。
「ところでさ…」
ショウが指差した先には、なおもロープでグルグル巻きにされた女の人の姿。
何かを訴えているのか、テープで塞がれた口をもごもごと動かしている。
そして、次の瞬間、ヤツはとんでもないセリフを吐き出した。
「————その子、俺にちょーだい。いくら?」
「は!?ショウ何考え…——ッ!!」
思わず声を張り上げると、「黙れ」とでも言うかのようにニット帽の踏みつける力が強くなった。
先程よりも増した圧迫感に、思わず呼吸が滞る。
(それじゃあ、デブヒゲ達がやろうとしてる事と変わんねえじゃねェか…!!)
「…テメェ、何が目的だ」
デブヒゲの眉間にみるみる刻まれていくシワ。
それに相対して、動揺すら見せずに、手馴れた雰囲気でショウは続ける。
「目的もなにも。その辺のチンケな組織相手に商いするなら、俺に売ったほうが利益見込めると思うけど」
「…」
「あー、大丈夫。俺の個人名義で買えば、“バック”だってわざわざ首突っ込んでこないだろうし」
「チッ…」
————ウソだろ…?
悲しみや怒りを通り越して、俺の中でぐちゃぐちゃとした黒い渦が螺旋を描く。
(これがスパイの、否、ショウの“本当の姿”なのか———————?)
目の前で淡々と進行される非人道的な行為に、俺は絶望にも似た感情を覚えた。
「っショウ…!!なんで、」
「…もっていけ」
デブヒゲが女の人を掴みあげたかと思うと、ショウへポンと突きつけた。
『キャッ』と短い悲鳴が漏れる。
「テメー相手にカネ取った所で、どうせゆく末は見えてるしな」
「あーあ、カッコつけちゃって」
よしよしと仔猫をあやす様に、ショウが抱きとめた女の人の頭を撫でる。
女の人の表情は陰になって確認できないが、特に目立った抵抗はしていなかった。
「…もう二度と目の前に現れんじゃねえ……オイ、行くぞ」
「あ、ボス待ってくださいっ…!!!」
デブヒゲはそれだけ吐き捨てると、ニット帽を連れて、暗い街中へと姿を消した。