コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 不良物語 ( No.4 )
日時: 2013/01/15 13:54
名前: しょめ (ID: DSoXLpvQ)
参照: http://syome

俺——、もとい、俺達は学校の時間なのに、ゲーセンへ遊びに来ている。
ただ規則に縛られるのが嫌なだけだから。
ただそれだけのことで。
俺達は冷たい視線を集めることになる。
別に全てが彼の言うとおりとは彼も思っていないだろう。
もう少し、自由に生きたいからそう生きる。
ただそれだけ。
それだけであった。
規則に逆らい自由に生きる人間(ひと)と、規則を忠実に守る犬(ひと)との違い。
ほとんど変わらないのだ。

中学時代の彼は荒れていた。
校舎の窓ガラスを割る、物を壊す、人を傷つけることは当たり前。
日常茶飯事。
他校の奴らと喧嘩して、生徒指導室に何回も連れて行かれた。
いわゆる、『不良』といったやつだった。
そんな彼と一緒にいた数少ない親友、杉沢一鬼。
元々幼馴染だった彼ら。
悪友である。
俺達は、悪さを重ねていくうちに『鬼の兄弟』として恐れられるようになった。
まぁ、人嫌いに彼らにとって、人が遠ざかってくれるほど好都合なことはないだろう。
それが俺——、岡崎大鬼という青年である。

中学校が卒業式を行っている。
だけど、彼らは出ない。
いや、出たくても出れなかったのだ。
教師達に卒業式だけは壊さないでくれと頭を下げられたからである。
校長にも頭を下げられてしまった。
その時に大鬼が言った一言。

『馬鹿馬鹿しいにもほどがある』。

もう、どうしようもなかった。

高校に入った。
頭は悪くない彼らは、市から遠く離れた私立高校に入った。
もう、中学生時代のことは忘れようといった理由からだ。

クラスわけがあり、大鬼と一鬼は同じクラスになった。
そして、もう一人。
見覚えのある名前。

『藤塚沙鬼』。

彼女は彼ら二人の幼馴染。
そして、彼らの妹のような存在である。
幼稚園・小学校のほとんどを共に過ごした彼女だが、中学校は離れてしまった。

だが、彼女とは、またこうして会えた。
実に3年ぶり。

——そして、同じクラス。

本当に腐れ縁って怖ぇと思った。

「大鬼……?」
ふと後ろから愛くるしく、聞きなれた声がする。
彼がゆっくり顔を後ろに向けると、そこには童顔の少女が立っていた。
「沙鬼……」
彼は噛みしめるように彼女の名前を呼ぶ。
「大鬼……!3年ぶりだね!元気だった?クラス、一緒でよかったね!!」
彼女の顔がみるみる明るくなる。
間違いなく彼女は藤塚沙鬼。
3年ぶりに会う幼馴染の顔はあまり変わっていなかった。
「あぁ……」
彼は曖昧に返事をする。
そして、もう一人いないことに気づく。
「沙鬼、そういえば一鬼は?」
「さぁ?まだ見ていないよ?」
「そうか……」
ニコッと笑う沙鬼。
その笑顔を見ると、彼は切なくなる。
そう、彼女も彼らの仲間。
俗に不良と呼ばれる類なのだから。

「あ、一鬼!」
あと数分で入学式が始まる頃に、一鬼は来た。
「遅せーぞ」
「悪い悪い」
そんな会話を繰り返す彼ら。
それを見ていた彼女はここに来てよかったと思っているのだろうか。
だが、それは彼女にしか分からないこと。
そして、どうでもいいこと。