コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 不良物語 ( No.6 )
日時: 2013/01/15 13:56
名前: しょめ (ID: DSoXLpvQ)
参照: http://syome

「ねぇ、そのキーホルダー、あたしに頂戴っ!」
出会ってから変わらない沙鬼の愛くるしい声。
大鬼はさっきクレーンゲームで取ったキーホルダーを沙鬼に渡した。
「ありがとっ!」
いつまでも無邪気さの残る沙鬼。
大鬼は肩をすくめた。

「お〜い、大鬼、場所移動しようぜ」
一鬼がそう言ってきた時、時間は11時30分だった。
「そうだな。購買が開く時間だ」
大鬼はクルッと踵(きびす)を返した。
すると、沙鬼が何かを思い出したような顔で立ち上がり、叫んだ。
「あ!ごめん、私、美麗姉と約束してたんだ!二人とも、2時までには戻るから、いつもの場所にいてね!」
そして、あっという間に沙鬼は人ごみの中へと消えていった。

「相変わらずだな、沙鬼は。昔からなにも変わっちゃいねぇ」
一鬼が苦笑する。
「あぁ、そうだな」
大鬼はそれに対してポツリと呟くように言葉を発す。
「それじゃ、行くか」
一鬼の一言のもと、大鬼達二人は高校へ向かった。

向かって前を大鬼、その斜め後ろに一鬼といったいつもの歩き位置。

ふと大鬼が後ろに目を移すと、一鬼が竹刀を持っている姿が目に入った。

一鬼は毎日竹刀を持っている。
「お前、まだその竹刀持ってんのかよ?いい加減、捨てれば?」
大鬼はいつも気になっていたことを聞いた。
だが、帰ってくる言葉はいつもと同じ。
「お前、知ってんだろ?俺の実家が剣道の道場だって。だからだよ」
これで、3回目だ。
一鬼なりに訳があるのだろう。
だが、気になる。
大鬼が口を開くと同時に一鬼が言う。
「親父が……。殺されたんだ。1年前に。これは親父がいつも使っていた竹刀なんだ。形見っつーもんだけどよぉ」
悲しそうに、哀しそうに呟く一鬼。
「……そうか。悪いことを聞いたな」
「いや、いいんだ。いずれ大鬼にも言うつもりだったんだ」
数秒の沈黙が続いた。

学校に着き、そのまま購買へと向かう。

購買につくと、うるせぇガキ共が広がる。
皆、大鬼達にビビッてばかり。
——ふん、いい気味だ。
大鬼達はそれそれカレーパンとコロッケパンを買い、沙鬼の言っていたいつもの場所へと歩いた。

裏庭をずっと奥に行ったところにある茂みをくぐった先にある小屋。
それが大鬼達3人の住処。
そして、沙鬼が言ってたいつもの場所。

——キイッ

錆び付いたドアから嫌なおとが零れる。
大鬼は舌打ちをした。
そして、奥のソファに腰掛けた。

大鬼はカレーパンを一口食べた。
フゥ……と一息を付く。

こうしてしばらく無言が続いた。