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Re: 不良物語 ( No.9 )
日時: 2013/01/15 13:59
名前: しょめ (ID: DSoXLpvQ)
参照: http://syome

自分のクラスに来た沙鬼は、まっすぐ自分の席に座った。
特に喋る人も友達もいないから。
皆が白い目で沙鬼を見て、何かヒソヒソ言っている。
聞こえるのは、『あ、藤塚さんよ』『今日は授業受けるのかしら』『シッ!聞こえるぞ!』『バカ、目ェ合わせんな!半殺しに会うぞ』とか、バカとバカの話し声。

——言いたいことがあるなら、自分で言えばいいじゃ
ない。

沙鬼は心のなかで呟く。

きっとこんな目にあっているのは、この外見と性格かな?
まっすぐ腰まで伸びた少し茶色が入ったストレートの髪に、少し釣り目の大きな目。
背は普通くらいで、ほそい手足と胴体。
そして、短いスカート。
ちなみにこの学校は茶髪・短いスカートは禁止だ。
だが、そんなもの規則に過ぎない。
ルールに過ぎない。
規則が嫌な沙鬼は、それらの全ての校則を破った。
破ってやった。
逆らう教師共を無視して沙鬼は自分の道(じんせい)を歩んでいた。
だから、規則を忠実に守る犬(にんげん)とは違う。
そんな負け犬とは関わらないでいた。
そして性格も気が強く、負けず嫌い(と大鬼と一鬼がよく言っていた)なので、友達が出来るわけがない。
いや、彼女にとってはできなくてもいいのだが。

授業が始まった。
沙鬼の席は窓側。
例の小屋が見える。

「先生、やっぱりアタシ帰るわ」
沙鬼が唐突にそう言ったのは、授業開始5分後の教師の説明の最中だった。
沙鬼はそう言って教師の返事も聞かずに特に何も入っていない鞄を抱え、席を立った。
クラス全員の視線が一気に沙鬼に集まる。

「帰るって、アナタ、今は授業中ですよ!?」
今は数学の時間中。
教師が無駄に吠える。
「先生知ってる?『弱い犬ほどよく吠える』。それ、先生のこと」
そう言い、沙鬼はクスッと笑った。

「じゃあね」
沙鬼は教室を出た。

廊下をひたすらに歩く。
階段を降り、下駄箱へ行き、校舎を出る。

中庭を歩き、茂みをくぐる。

そうして沙鬼はいつもの場所へと向かって行った。

いつもの場所に着く。
ドアノブに手を掛けようとすると、中から大鬼と一鬼と、誰か、冷たい女の声がした。
どこか雅の声に似ている。
——まさか。
中から会話が聞こえる。

『沙鬼は知らないようだけど、よかったよ。私があの番長の妹だって』
『あぁ?どういう事だよ』
『沙鬼はね、何も知らないまま私に利用されているってこと』

沙鬼の目に涙が溜まる。
彼女はそのままドアノブをひねった。