コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: §モノクロ:コード§【参照80ありがとう!】 ( No.22 )
- 日時: 2013/02/02 17:31
- 名前: しょめ (ID: s1qwLtf7)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=31534
「さてっ! 今からこの瑠璃が『家』案内をしちゃいますっ!」
瑠璃が元気よく手をあげて言う。気づいたら紀伊さんはもういなかった。
「えと、『家』……?」
「はいっ! 瑠璃たちがいるこの場所を、皆は『家』と呼んでいるのですっ!」
なるほど、皆が集う場所だから『家』か。あぁ、そうだ。もう僕らには帰る場所なんてなかったんだ。
「元気ないですかっ?」
心配しているのかどうか分からない。とりあえずは……、大丈夫だろう。
「いや、なんでもないよ」
「そうですかっ! じゃ、まずは皆さんの部屋を見て回りましょうっ」
心なしか、瑠璃の声がいつもよりも弾んでいる。
僕の部屋の前を通り過ぎ、少し歩いた先。先ほど見慣れた僕の部屋と同じ扉があった。
「ここは瑠璃の部屋ですよっ」
隣は瑠璃だったのか。よく見れば、扉のところに可愛らしく『コード:06瑠璃』と書かれた板が垂れ下がっていた。それにしても、隣が覇流さんとかじゃなくてよかったと思う。だって隣が覇流さんだったら何をいつ怒られるか分かったもんじゃない。別に覇流さんが嫌いなわけじゃないが。
「入りましょうっ」
絶対部屋に入れたいオーラをむんむん漂わせる瑠璃。しょうがない、入ろう。そうでもしないと、次へ行けそうにない。
結果は予想通りだった。緑だ、全てが。もちろんさっきと同じで、比喩的な表し方だ。しかし、これほどまで緑とは。
絨毯もフワフワの真緑色。壁紙も白の生地に緑色の水玉模様が浮かんでいる。置いてある家具も緑色系だ。なんだろう、どうしてそこまで緑色にこだわるか知りたいぐらいだ。
「どうっ? どうっ?」
瑠璃がキラキラした目で問い詰めてくる。いや、問い詰めてくるのは目のほうか。
「う、うん。瑠璃っぽくていいと思うよ」
少し苦しかっただろうか。心配になってくる。
「……」
しばらく瑠璃は無反応だった。
「あの……」
僕、傷つけてしまったのかな、と僕の心配度がMAXになりつつあるそのとき。
「ですよねっ! よかったです、明人君に気に入られてっ!」
心配して損した。まぁ、損はしていないと思うが。なんだろう、とにかくこれでよかったんだと思う。
「さて、次行きますよ、次っ!」
先ほどよりも更にハイテンションになった瑠璃は、僕の手を掴んで部屋を出る。
「……っ!?」
痛みを感じた。それは言うまでも無く、握られた手からだ。
「どうしましたっ?」
「る、瑠璃、痛いんだけど……?」
しかしこの握力だ。こんな僕よりも小さい子が出せるわけ……
「あぁ、すみませんっ! つい興奮してしまいましたっ!」
そう言って瑠璃は僕の手を掴んでいた手をパッと離す。
「私、小さい頃から少林寺と合気道やっていたんですよっ! なので人一倍力は強いんですっ!」
可愛い顔して立派な武道少女だった。どうりで軟弱な僕は手を握っただけですぐに負けるわけだ。にしても、武道習っていたとはいえ、年下に負けるなんて。少なからずショックだ。
「じゃ、次行きましょうっ!」
そして何事もなかったかのようにしている。こんどから小さい子を甘く見ないようにしよう。そう決心付いた僕は、既に歩き始めていた瑠璃の後を追った。