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Re: モノクロ:コード【人気キャラ投票実施中っ!】 ( No.61 )
日時: 2013/02/02 17:56
名前: しょめ (ID: s1qwLtf7)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

 天涯孤独。
 この四字熟語には、4文字じゃ表せないたくさんの意味が詰まっているんだ、と僕は思う。血の繋がりがない赤の他人とこれから同居生活が始まる。温かみはあると思うが、どこか寂しい。ぽっかりとした穴が空いているようで、満たされない。空虚だった。ただの——、空洞。

「これで一応『家』案内は終了です、お疲れ様でしたぁーっ! あ、明人さんはこの後管理人さんの所へ行ってお話の続きを聞いてきてくださいねっ」
 ゲームセンターのような場所から離れ、再び壁に吸い寄せられる。そこで瑠璃にさっきのようなことを言われて解散。僕は一人になって考えていた。

 天涯孤独なんて、無縁だと思っていた。昔——、もう何年前だったか忘れてしまったけど、父がいたとき。全てが満たされていた。優しくて大好きな母がいて、厳しかったけど楽しかった父がいる。祖母や祖父は元々いなかったけど。3人家族だったけど、楽しくて——、心が潤っていた。今じゃ考えられないほどの笑みを浮かべている僕を思い出す僕は、過去を恨むようになっている。昔なんて、もうどうにもならないのに。

 父が死んで、母と二人きりに。シングルマザーで不安がってた僕がいたのを記憶のどこかからが呼び戻す。母は抱きしめてくれた。

 大丈夫、あなたは私が守ってあげるから。

 それはお決まりの母の言葉だった。
 楽に生きようなんて思ったことなんか一度もなかった。母はああ言ったけど、そんなのただの親不孝じゃないか。それだけは勘弁だった。父が死んで大変なのに、寂しいのに。母は僕に笑いかけてくれるから。僕は、たまに泣いてしまう。その時も母がいたのだ。
 大丈夫、大丈夫、と。僕をなだめるように言う。優しく微笑んで。包み込むように。母は僕に囁く。

 あなたは名前のように、明るく真っ直ぐ生きなさい。

 時々僕をなだめる時に言ってくれていた母の口癖だ。どうしてか、その言葉でスーッと何かモヤモヤしたものが引いていく。

 そして今。母はいない。父は昔に死んでいる。祖父も祖母もいない。誰もいない。あの3人家族で少なからず心から笑いあえてた家族が——いない。

 ふと今それに気づいて。僕はたまらなくなって。
「…っぁ……!」
 声を出して泣いてしまう。強くもないただ弱い僕は、ただただ泣いてしまう。泣くのを我慢することを母は叱らなかった。

 だって泣いたら誰かが助けれくれるでしょ?

 それが母の言い訳で。僕が弱虫でいじめられてたときも。一人泣いていた時に、フワッとどことなく母が来て優しく包んでくれた。

 ほらね、泣いたら誰かが助けてくれる。

 でも、違うんだよお母さん。だってもうお母さんはいないじゃないか。優しく包んでくれないじゃないか。微笑んでもくれないし、囁いてもくれない。僕は独りぼっちじゃないか。ねぇお母さん、助けてよ。僕、泣いているんだよ。この年齢になってもお母さん抜きは辛いんだよ。いつ助けに来てくれるの。ねぇ、お母さん、お母さん。惨めでしょ、お母さんって言って泣いてる僕は。

 ねぇ神様。これって、僕はもう自立しなければいけないっていう警告なのですか?そのために僕から大切な人を奪ったのですか。神様、あなたのせいで僕はもっと惨めで馬鹿な男になっているんですよ。ねぇ神様。

 僕を助けてよ。