コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: モノクロ:コード【感想COME!】 ( No.151 )
日時: 2013/02/15 17:31
名前: しょめ (ID: SR0aabee)

【番外編】 バレンタイン編


—————


 2月14日。それが今日の日付だ。この日はバレンタインと呼ばれる、女子が男子にチョコレートを渡す。

「明人さんっ!」
 いつもと同じ元気な——いや、少しだけテンションが高いような気がする瑠璃が、明人に話しかける。何やら後ろに隠している様子が気になるが。
「今日は何の日か知ってますかっ?」
「えぇと、14日だから……、バレンタインだったよね?」
「そうです、バレンタインですっ!」
 そう言うと、瑠璃は後ろに持っていた何かを、「じゃーんっ!」という効果音と共に前に出す。
 前に出されたものは、手に乗るサイズのバスケットに可愛く盛り飾られたもの。また、バスケットにも緑色のレースや何やらとが飾られている。
「もしかして、チョコ?」
 少し戸惑ったような感じで明人は聞いた。まるで信じられないことのように。
「はい、手作りチョコですっ! 実は毎年コード内でやっているんですよっ」
「そうなんだ。こういったパーティー形式もあるんだね」
「はいっ! コードは家族ですからっ」
 そう嬉しそうに微笑んで、瑠璃は手に持っていたチョコをむりやり明人に押し付け、スキップで駆けて行く。スキップをしているので、瑠璃のツインテールが辺りに舞うが、彼女は気にしてないみたいだ。
「明人さんっ! 食堂集合ですよっ」
「え、でも今は……」
 今の時間は3時あたりだ。食堂は開いていない時間に当たる。しかし少し気になったのと、期待をしてみる彼は——嬉しそうに跳ねるツインテールを追いかけた。

「明人さんの到着ですっ!」
 瑠璃が行った場所は、大広間だった。元気よくその扉を開け、叫ぶのは当然瑠璃だ。
 明人が大広間に入ると、もう明人以外のコードは揃っていた。一体何をするのだろう、と明人が少々心配になる。
「さてさてっ。全員が集まりましたねっ! では今年も始めますよっ」
 そう言ったのも当然瑠璃であり、その手にはなぜかマイクが握られている。……オモチャのだが。
「始めるって何を……?」
 明人が疑問を投げかけたと同時にその回答は返ってきた。

「さて始まりましたぁっ! 毎年恒例企画、コード:バレンタインパーティーですっ!」
 何だか自分だけが気まずくなって、明人はこっそりと座る。右に越後、左に紀伊のポジションだ。向かいには覇流がいる。普段イライラしている雰囲気の彼だが、今は少しだけ顔が綻んでいるような感じがする。それは同じく無表情の月夜も同じで。見た目は分からないが、少しだけ穏やかな雰囲気だ。さすがに毎年やっているだけある。
「ではまず最初の料理は——上総ちゃん作、手作りクッキーっ!」
 その元気な瑠璃の声に反応したのか、高性能機械がそれを運んでくる。
 小皿に2・3枚、可愛らしくかたどられたクッキーが目の前に置かれる。ほんのり、バターの香りがする。
「そして次は——私、瑠璃作、チョコっ!」
 なぜか瑠璃はテンションが凄い上がっている。きっと楽しみにしていたのだろう。
 そして運ばれてくる先ほど明人が見た、可愛らしく飾られたチョコ。先ほどはあげるためではなく、釣るためだと明人は少し痛感する。

「それではみなさんいただきましょうっ!」
 そんなテンションが最高潮に達した瑠璃の合図の元、コード達はそれぞれ配られたお菓子を食べる。
「おいしい……」
 つい口に出してしまった本音。それは明人が上総のクッキーを食べたときだった。しかしそれに答えたのはなぜか紀伊だ。
「そうでしょう。上総ちゃんったら、たくさん練習していましたんですわよ」
 いつもと変わらない、紀伊の少し間違った上品言葉。それに上総は少し照れたような表情を見せる。
「別に大したことはないですぅ。ただ本を見て作ってみただけですぅ」
「あら、夜中まで熱心に調べていましたわ」
「…………」
 紀伊に反逆された上総は何も言えず、俯く。明人はそれを見て、少し微笑んだ。

「うぉ、このチョコ美味いぜ! 瑠璃のだろ?」
「そうですっ! 私も一生懸命作ったんですっ!」
「やるじゃねーか」
 互いに笑いあう、瑠璃と越後。彼らは本当に気が合い、楽しそうな雰囲気を出す。見ていて微笑ましい光景だ。
 覇流も月夜も、口には出さないが、黙々と食べている。少し明人は嬉しかった。

 ある程度食べ終え、ふと気づく。
「あれ、紀伊さんのは?」
 その明人の声に答えたのは、紀伊ではなく瑠璃だ。
「さてさてっ! では最後に姉御作、チョコレートケーキだぁっ!」
 一流の司会者並みのノリの良さだ。
 目の前に運ばれてきたのは、バスケットや小皿などではなく、少し大きめの台。そしてその上に——、
「うわぁ……」
 感嘆が出るぐらいの4段ワンホールチョコレートケーキ。細かいところまで綺麗で、ケーキの側面にも、何やら模様が描いてある。表面の所には、可愛らしいコード達の似顔絵。そこに白い粉が降りかかっていて、ガトーショコラみたいな雰囲気が出ている。”いかにも”だ。
「少し失敗はしてしまったわ」
 そう言ってクスッと笑う紀伊。でもそれすらも打ち消せるほどのものだった。

「ではいただきましょーっ!」
 テンションのメーターが振り切れたような瑠璃は、そう叫ぶ。
 「うっめー!」「美味しいですぅ」「さすが姉御!」などと、歓喜の声が大広間に響き渡る。紀伊も嬉しそうに微笑んで、自作のケーキを口に入れる。
 紀伊が作ったケーキは、本当に美味しかった。
 クリームもフワフワで、チョコレートもしつこくない。似顔絵も似ていて、甘すぎず、さっぱりとした感じだ。今まで食べたチョコレートケーキよりも、一番美味しいと明人は心に思う。

 年に一度のバレンタイン。コードは外に出ることもままならなく、他人と接することもあまりない。だからこそ彼らは自分たちで盛り上げるのだ。


—————


番外編です!
今日はバレンタインとのことで、お題はバレンタインです
何か明人目線で本編を書いていたから、少し変かも…
まぁ、そこは気にしないように!

さて、バレンタインがあるってことは……、
ホワイトデーもこんな番外編がありますぞ!
もちろん次は男子が…、この先は来月ですねー

では次の番外編は来月のホワイトデー!