コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: モノクロ:コード【参照800!!】 ( No.166 )
- 日時: 2013/02/18 17:30
- 名前: しょめ (ID: Je/H7tvl)
- 参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/1035jpg.html
ゴウンッと揺れ、ヘリコプターが止まり、ゆっくりと下降していく。その下には、この国で一番高い山があった。
——僕らの『家』は、富士の麓にあったんだ。
ふとそんなことを思う。事実なのだが。
僕がボーッとしていると、声がかかった。
「行きますよぉ?」
上総さんだ。どうやら知らないうちに庭に着いたらしい。そしてふと疑問が浮かぶ。
「あれ、瑠璃……は?」
先ほどまでいた、瑠璃がいない。
「覇流さんに抱えられて、医療機関へ運ばれましたぁ」
呑気にそんなことを言う。だが、一見そんななんの感情も見えない表情だが、なぜだろう。少し彼女が焦っているようにも見えたのだ。嫌な予感が更に積もる。
「……別に、気にしなくてもいいと思いますよぉ」
それは僕の目の前にいた、上総さんからの言葉だった。
「え?」
意外な言葉をかけられたのか、自分でもよく分からないが、自然にそんな声が出てしまった。
未だに焦りを隠して呑気に僕に振舞っている彼女は続ける。
「こんなこと、よくあるんですよぉ。さっきは覇流さんがいたのであまり口出しは出来ませんでしたがぁ、抹消の時の傷なんてよくありますぅ。そもそも、なかったほうのことが少ないほうですぅ。なので、明人くんのせいではありませんよぉ。気にしないほうが身のためですぅ。ちなみに覇流さんを気にしているのなら、大丈夫だと思いますよぉ。覇流さん、怪異を倒した後はいつもあんな感じなんですぅ。ただ、今日は少し怒ってましたねぇ」
僕に言わせる機会を与えずに、長々と彼女はその独特の口調で言う。それは、僕を宥めていると捕らえていいのだろうか。いや、今回に関しては、そう捕らえておいておこう。
「そう、ですか。ありがとうございます……」
おそらく彼女は、こんなことを言える性格ではないのだろう。天然と紀伊さんに言われているが、しっかりとしている人だ。それでいて——恥ずかしがり屋なのを僕は知っている。
ちょっと前。僕が瑠璃の豹変を見る前に、僕は見たのだ。——彼女が月夜さんとすれ違い、少し顔を俯かせていたことを。他の人とはそうでもなかったのに。ただ、僕はそれがなんなのかを知らないのだ。
そんな彼女にらしくもないような言葉を言われる。嬉しい。率直にそう思った。
でも、この不安と嫌な予感はなんだろう。