コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Doppelganger ( No.27 )
- 日時: 2013/01/10 14:22
- 名前: みかん ◆svacoLr1WE (ID: vS1wLACl)
#5 綾side
半月前の部活後、私は大事にしていた好きな人の写真を部室に忘れてしまった。
その好きな人の事はハルにしか話していなかったから、急いで探しに行ったのを覚えている。
部室に見知らぬ女の子が居た。——……何かを手に持っている。
彼女の持っている写真には見覚えがあった。————私が探していた写真だったのだ。
「す、すみません。それ、私の写真……なんですけど……」
「あ? これ、あんたの?」
その見知らぬ彼女は可愛いらしい外見とは結びつかない様な、低い声で言った。
———……怖い。
すると彼女は大事な写真にをかけた。
『ビリッ』という不快な音を立てて、写真の切れ端が宙を舞った。
「?!」
———っ、写真が……。やぶかれ……。
「こんなんでコソコソするより、まず告白しろよブス」
……ひっ、ひどい……。私は、ただ……、自信がないだけなのに———……。
あなたに何が分かるの……?
私の目は涙であふれていた。
「この事、誰にも言ってないわけ? 言わない限り、何も変わらないんだよ」
目の前の『悪魔』は馬鹿にするように笑った。
「ハルは……、ハルは知ってるもん。応援するって言ってくれたもん!!」
私は勇気を振り絞って言った。
ハルはいつも応援してくれる、唯一の……大切な親友だもん。
「ハルって……斉藤はるの事?」
「えっ、何で知って……」
彼女の怒りはピークを達した。
「あんた、斉藤はるの何なの?!」
少し息の荒い彼女は、何に怒っているのだろう。
私が告白もしないで立ち止まっている事?
それとも私とハルの関係?
考えれば考えるほど、分からなくなっていった。
「斉藤はるをこの学校から消せ」
突然、彼女はひどく低い声で言った。
……ハルを学校から消す?
何を言ってるの、この人は。
そんな事出来るはずないじゃない、
「そんな事、出来ない!」
私は叫ぶように言った。
大事な、大切な……ハルにひどい事なんてしたくない。
「……死にたいの?」
彼女は相変わらずの低い声。
「いい? 私はあんたの『青春』なんかどうでもいいの。この世から消せなんて言ってないんだから、出来るでしょ? ……返事は?」
私の答えは変わらない、
「嫌、絶対にいや」
私の声は少し震えていた。
……すると彼女は少し鼻で笑うと、写真の切れ端をヒラヒラと振って見せた。
「この事、みんなに言ってもいいの?」
————っ、そんな……!!
「もし、あんたが斉藤はるを消さないんだったら、この学校中……もちろん本人にも言ってあげる」
……そんな、私はただ……。
「どっちにする?」
彼女はにこやかに言う。
私にはとても残酷な笑い方に見えた。
ハルを裏切るなんて、そんなの嫌だよ……。
……でもそうしないと私……。
私は卑怯だ。どうしても楽な方を選ぼうとする。
「わ、分かりました……。ハルを、この学校から……消します」
私は足の震えが止まらないのを押さえつつ、自分の卑怯さを噛み締めて言った。