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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Doppelganger ( No.30 )
- 日時: 2013/01/11 16:35
- 名前: みかん ◆svacoLr1WE (ID: vS1wLACl)
#6
すべてを話した綾は静かに目を閉じた。
「……それから、いじめが始まったの……」
「へ、へぇ……」
俺はそう答える事しか出来なくて、うつむいた。
……俺、本当に学校やめかけたなぁ……。
今、こうやって綾と話していると少し後ろめたい気持ちになる。
……ふと綾の方を向くと、目の前の彼女は泣いていた。
「?!」
「うわぁぁぁぁん」
えっ、え?!
「え、ちょっ、何で泣くの?」
「だって私、あの時……自分の事ばかり考えていて……」
綾は次から次へと涙を流した。————……前の『私』の様に。
「ご、ごめんなさいハル……。私、ほんとに後悔してる……」
独り言のように小さな声で言う彼女は痛々しくて、見ていて悲しくなった。
……後悔?
やだ、『後悔』なんて欲しくない。綾の涙、これ以上見たくない……。
「……後悔しなくていい」
俺の口が勝手に動く。
本当に無意識だった。
「———え?」
綾が顔を上げる、少し驚いた表情だ。
「俺……じゃなくて、ハルって子もそう思ってる」
俺は慰める様な形でしか、本心が言えない。
……それが、とても悔しかった。
それでも綾の顔はどんどん明るくなっていった。
嬉しそうに綾が俺をしっかりと見る。
「そうだね、……春馬君……ありがとね!!」
————……!!
綾が笑うの見るの……すごく久しぶり。
「う、うん。どういたしまして」
俺も笑った。
しばらくの沈黙を破るようにチャイムが鳴る。
「あ!」
俺が声を発した時にはもう遅い。
「授業、始まってるよ!!」
俺と綾は弁当を片付けて立ち上がった。
……あ、蒟蒻ゼリー……。まぁ、いっか。
俺と綾は教室へと走った。
居た場所から、教室まで遠かったはずなのに。とてもとても短く感じた。
その時は、俺が唯一男子になっている事を忘れられた瞬間だった。
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