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Re: Doppelganger ( No.5 )
日時: 2013/01/06 18:03
名前: みかん ◆svacoLr1WE (ID: rys6jfTw)

#2 私のドッペルゲンガー
『ジョキン』
髪の毛を切る音が、部屋中に響く。

「ふぅ、このくらいでいいかな……」
私は鏡の前の自分を見つめる。
……ずいぶんと短くなってしまった。

「ほんとに……男子みたい」
なるべく声を低くして言ってみる。

床にはたくさんの髪の毛が落ちている、
私はそれらを拾ってゴミ箱に入れた。


……服はどうしよう……。さすがにスカートは履けないし。
すると、思い当たる顔が。

「そうだっ! お兄ちゃんに借りよう」
私は母の目を避けるように急いでお兄ちゃんの部屋へと向かった。



「お兄ちゃーん、今いい?」
「いいよ」

お兄ちゃんの返事とともに部屋に入る。部屋の中は、かすかにオレンジの香りがした。昔からお兄ちゃんの匂いだった。

「——————?な、なにって。ハル、まさかお前ほんとに男になるつもりなのか?!」
私の髪を見るなり、叫んだお兄ちゃん。きっと冗談で言ったつもりだったのだろう、『後悔』という文字が顔に浮かんでいる。

「いや、でも似合ってるよ」
お兄ちゃんは何かを自問自答しながら私に言った。
興味深そうに私のまわりをぐるりと回る。

「……んで、服は? まさか女物でうろつくわけ?」
「そう、その事なんだけどね、お兄ちゃんの制服貸してほしいの」

お兄ちゃんはクローゼットから、アイロンしたての様なぴんぴんの制服を出してくれた。汚れ一つない、まるで新品の様だ。

「はい。俺も、もう着ないから。あげるよ」
そう言って私にぴんぴんのシャツ、ズボンを手渡した。女物よりも重く感じるのは気のせいだろうか。

私は「ありがとう」と言って部屋を出た。



「今、何時だろう」
ふと時計を見ると、10時半だった。
「やっば、明日からまた学校行くのに———……」
でも制服のサイズあわないと嫌だし、試しに着てみたいな……。
ま、いっか。もう寝よう。



『ピピピピッピピピピッ』
う…う———ん、まだ眠いよ……。あと、もうちょっと……。

「—−—————っあ! 学校っ!!」

私は少しそわそわしながら男子用の制服に着替え、リビングへと急ぐ。
その途中、お母さんとあって「おはよう」と言われた。
最初はなんだかとてもびっくりしてたけど、どうやらお兄ちゃんから話しを聞いている様だった。……ありがとう、お兄ちゃん。

リビングにはお兄ちゃんが朝食を食べていた。
「おはよ———……はやいな?」
「うん」
「制服、お前の方が似合ってる」
「ありがと」

ご飯をパッと食べて、外へ出た。
私の足は、気がつくと勝手に走っていた。