コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 狼たちと同居中。 ( No.8 )
- 日時: 2013/01/31 13:51
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第2章 狼たちとの出会い
キイイィ…と音を立てて、ドアが開く。
私はずっと、どこかの王宮のようだ…と思って、建物の中を見渡していた。
「あまり緊張しないで。…さ、まずはこちらへ」
私は一つの部屋へと案内された。
おばあさんはお茶を淹れてくれた。(素人が入れるとは思えないほどおいしかった…)
「…白原あゆみさん。まずは自己紹介をしましょう。私は神埼星子。ご存じかわからないけれど、○×製薬の前取締役です」
○×製薬て…あの超大手メーカーの…?!
そんな人におばあさん、とか言ってたのか私…。
それから、五分ほどの話が始まった。すべてを告げるととても長くなってしまうので、簡潔にまとめよう。
・神崎さんは私のことを不憫に思い、この「星屑荘」という場所へ住まないか、と言ってくれている。
・さすがにそれは…と私が言ったので、「じゃあ、メイドのような役割を果たしてもらう」と言われた。
・学校は普段通り通っていい。
・ここの住人は朝食、夕食はともに食べるルールらしい。
・神崎さんはここの管理人ならしい。(普段はいないらしいが…)
「…で、いかがかしら?」
「でも…私、そこまでお世話になるわけには…。大したこともしていません」
「あら、困っていた老人を助けてくれたことは小さなことなのかしら?」
何でこんなにこの人は私に良くしてくれるのだろう。
神崎さんは手にしていたカップを置いて、まっすぐに私のことを見つめた。
「…自分からしたら小さなことかもしれないけれど、相手から見たら大きなことかもしれないのよ」
そう言うと、優しく微笑み、私に笑いかけた。無言で私の答えを待ってるのだ。私は…
「……これから、よろしくお願いします…!」
私は深々と頭を下げた。
神崎さんは手をたたき、笑顔になる。
「言い忘れていたけれど、ここの住人、皆男なの」
「……え?」
ちょ、え?聞いてない。てかかなり大事なこと忘れてたんじゃ…?
「今、紹介するからちょっと待っててね」
と言うと、神崎さんは席を立って行った。
「男子の荘に私は入ってきちゃったっていうの…?」
顔が青くなっているのが自分でも分かった。
この「星屑荘」には普段、神崎さんはいないらしいから、女子は私一人だけ…不安すぎる…。
そんな風に考えていると、神崎さんが戻ってきた。
「紹介するわ。この…」
と、言いかけた瞬間、神崎さんの背後から一つの影が現れた。
「わーその子が黒原あゆみ?」
か、可愛い…!!
その男の子はすごく可愛くて、ついついキュンとしてしまう。
「あ、あの、黒原じゃなくて、白原あゆみです…」
「え、そうなの?ごめーん!」
絶対悪いと思ってない…。
「うるさい。リク。お前少し黙ってろ」
次に出てきたのは世で言うイケメンという人だった。
「たく…管理人はお人好しすぎんだよ。何こんな女連れ込んでんだ?」
「は…?!」
カッコイイのに、むかつくことを言うやつだった。
「お前…絶対に俺に惚れるなよ?」
「は、はああああ?!」
いくらなんでもこれには我慢できなかった。
「そ、そんなこと絶対にない!あなた、ちょっと自意識過剰すぎると思います…!」
「んだと、このやろ…!」
と私に突っかかってきた彼を後ろから誰かが止めた。
「こら、うるさいのは真の方だよ。…申し訳ないね、白原さん」
「あ、い、いえ…」
私の前に現れたのは優しそうな方だった。紳士的で、すごく素敵。
「白原さんの経緯は聞いたよ。大変だったんだね」
「……!!」
初めて私のことを理解してくれる男性だ…!
感動に浸ってる場面に最悪の一言が飛んでくる。(事実なんだけどもね…)
「……だからって、人の家に普通上がり込む?随分常識外れの人間だよ」
「えっ…」
そう言ったのは、すごく整った顔した、色白な美しい少年だった。思わず見とれてしまうほどに…。
「こらこら。まだ紹介もしてないんだから」
と神崎さんが言う。
「改めて、紹介するわね」
さっきのむかつく男の横へ神崎さんは行く。
「この人が、宮野真。あゆみさんと同い年よ」
「…精神的にはお前の方がガキだろ」「こら、真!」
「…次に、園田リク。あゆみさんより一つ年下よ」
「よろしくー」
「この人が、梅澤和希。あゆみさんより一つ年上」
「よろしくお願いしますね」
「最後に、平井泉。あゆみさんと同い年ね」
「……………………」
ず、随分個性的だなぁ…。
「じゃ、私は戻るから、あゆみさん。この人たちをお願いね」
「え! も、もうですか…?」
「ええ。頑張ってね」
パタン…とドアが閉まる音がする。
この家には私と男4人だけ…。
「えと、改めまして…これからお世話になります。白原あゆみです」
「…俺は仲良くするつもりねーから」
そう言って部屋に戻る宮野さん。
「じゃ、またねー」
そう言って部屋へ戻るリク君。
「では…」
そう言って部屋へ戻る梅澤さん。
「……」
無言で戻る平井さん。
取り残された私…。
「……どんだけばらばらなのよ、ここの住人は……!!」
—これが、私と狼たちの出会い。
第2章 完