コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 狼たちと同居中。 ( No.194 )
- 日時: 2013/03/27 20:38
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第9章 思い出話
「あゆみさん、何してるの?」
「和希さん……。今、アルバムの整理してて……」
私が押し入れの中から引っ張り出しているたくさんのアルバムを見つめながら和希さんが話す。
「へえ……。あ! これ伊代音さん?」
「はい。確か出会った頃のですかね……」
伊代音と出会ったのは、高校生になったばかりの4月だった……。
「あははっ、何それマジウケるー」
入学式が終わり、校門の前で弾ける様な笑い声をあげていた女子グループ。最初はうるさい人達、と思った。帰宅するためには横を通らないといけなかった。さらっと通り、私は帰ろうと思っていた。
横を通り過ぎようとした瞬間、私の腕が掴まれた。
「……何ですか?!」
腕を掴んできたのは私がうるさいと思ったグループの内の一人だった。
「……どこの化粧水使ってる?!」
「へ?」
そう唐突に聞かれた。
「ちょっと伊代音—。何そんな子に構ってんの?」
「だってほら! めっちゃ色白いしこの黒髪ストレート! まさに大和撫子って感じ! いいなあー」
伊代音、と呼ばれたその子は大和撫子を目指しているのだろうか?
彼女は私をじっと見つめてから言った。
「決めた! 私そっちのグループ抜けるわ!」
「はあ? 何言ってんの?!」
「良いじゃん。高校入ったんだし、新しいグループ作れば」
ということは、中学からのグループだったのだろうか。
「意味分かんない! 勝手に抜けろ!」
乱暴な口調でそう告げて女の子たちは去って行った。
「あ、あの……良いんですか? 折角の友達……」
「いーのいーの! それよりさ、名前教えて?」
「私のですか? ……白原あゆみです」
「へー可愛い名前! 私は大澤伊代音! よろしくね!」
そう言って伊代音は手を差し伸べてきた。私はおずおずと手を伸ばした。
「よ、よろしくね……」
「へえ。そういう出会いを……」
「はい。それ以来はずっと一緒に居ます」
和希さんは私の話を静かに聞いてくれていた。
「あゆみー昼食ー」
真君の声が聞こえてきた。
「あ、今すぐつくりま……」
そう言おうとして、立ちあがった私を和希さんは止めた。
「僕が作るから、あゆみさんは続けて?」
「え、でも……」
和希さんは優しく笑い、席を立った。
「……大人だなあ」
そして、私は和希さんに甘えてまた整理を続けた。
「あゆみちゃんっ。片づけは順調?」
「リク君、どうしたの?」
リク君がカップアイスを二つ持って笑顔でやってきた。
「和希があゆみちゃんに持ってけってさ」
そう言って、私にアイスとスプーンを渡す。
「ありがとう……!」
「ねえ、あゆみちゃんの話何か聞かせて?」
「え? そうだなあ……じゃあ、クロとの話でも……」
クロと出会ったのは確か5月に入ってからだった気がする。
「ねえねえ! 私好きな人出来たんだー」
「え! 伊代音に?! なんて人?」
「B組の藍川君」
伊代音が私にそういう話をしてきた時だった。後ろから声が聞こえた。
「それはあきらめた方が良いわね」
「……は?! 誰?!」
それがクロだったのだ。
「彼はこの学校に3人、他校に6人の彼女がいるわ」
「……あなた、急に何なんですか?!」
私は謎の女に言い放った。
「私は月闇クロ。あなた達は知らないかしら?」
「月闇クロ?! それって……情報屋の?!」
伊代音が驚いた顔をして言った。
「知ってるのね」とクロが満足げにうなずく。
「なーんだ情報屋の! じゃあ諦める! 教えてくれてありがと!」
社交性と言っていいのか悩むが、そういうものが高い伊代音だ。すぐクロと意気投合し、今では仲が良い。
今でも伊代音に好きな人が出来た場合は情報を与えている。
「ふーん……」
リク君がアイスを食べながら頷く。
クロの好きな人はリク君……。情報はどれぐらい手にしてるんだろう? と不思議に感じた。
「この前の執事喫茶にあゆみちゃんの友達来てたよ」
「え! じゃ、じゃあ相手を……?」
「うん。僕はクロちゃんの」
そう言ってささっと帰って行った。
詳細を聞きたかった……。
その後も整理は続いた。
「……アンタさ、ちゃんと考えて整理してる?」
「はい?!」
急に話しかけられて驚いた。
「これじゃ片付けと呼べないよね。ただ広めてる感じ」
「そ、その通りです……」
泉君だった。確かに私の部屋は物を出しているだけで片付けと呼べなくなっている。
「……手伝ってあげるから、なんか話して」
「え! 手伝ってくれるの?」
「寝るところもないくらいじゃ可哀想だからね」
言葉は辛辣だけど手伝ってくれるというのなら良しとしよう。
「じゃあ、ゆきとの話でも……」
ゆきと出会ったのはクロと出会ってすぐだった。
私が日直だった帰り、私は教室に残り、日誌を書いていた。
「……あれ、佐山さん? どうしたの?」
教室にゆきが入ってきた。
「わ、私の名前覚えていてくれたんですか……?」
ゆきが目を見開いて言った。
「うん。佐山ゆきさん、でしょ?」
そう言われて笑顔になるゆきが可愛いと思った。
「あ、ありがとう……白原さん」
少し照れながらゆきが言う。
この子と仲良くなれるかもしれない。そう感じて私は言った。
「ゆき……って呼んでも良いかな?」
「……! う、うん!」
その次の日、伊代音とクロに紹介した。二人ともゆきを「可愛い」と言って、私達のグル—プは出来たのだ。
ゆきは優しくて可愛い良い子。癒し系と呼べる大事な人だ。
「……ていう話」
「そう」
泉君はそれだけ言って黙々と片づけを続ける。
片づけてくれるのは有難いけども、話にもなにか反応していただきたい。
「……良いんじゃない? アンタの友人の中じゃ一番まともでしょ」
そう言って、泉君は立ちあがった。
「これで寝れるところはできたね。じゃ」
本当に寝れる場所だけ作って去って行った。
でも、ナチュラルにゆきのことを言った。
「……頑張れゆき」
私はそう呟き、また片づけを始めた。
完