コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 狼たちと同居中。 ( No.223 )
- 日時: 2013/03/30 13:40
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第10章 父、帰還。
「……婚約?!」
父の言葉にさすがに動揺した。
後ろの狼たちも、話の内容までは聞き取れないが、話していることは分かる。
「知り合いの会社がそんなに大きいのかな……」
「あゆみちゃん、この家出ていくの?!」
「……別に婚約以外でもいつかは出ていくだろ」
「寿グループって知ってるよな?」
「……うん。大手化粧品会社でしょ?」
そうか。『知り合いの会社』とは寿グループのことだったのか。
昔から馴染みがある。その取締役がお父さんの昔からの知人なのだ。その息子が私の幼馴染でー……。
……ん? それって、もしかして……。
「お父さん、婚約ってまさか……」
「やっぱり予想できたかあ。そう! あゆみの婚約相手はお前の幼馴染の寿莉都君だ!」
やっぱり……。
昔から妙につきまとってくる寿の王子様的存在。
「その条件をのみ込めば、仕事も、住む家も免除してくれるそうだ!」
お父さんが笑顔で言う。
そのために、私に好きでもない人と結婚しろって言うの……?
「もちろん受けるよな?! 結婚だって不安がることない、莉都君は昔から知ってる人だしなあ!」
確かにそうだけど……。
私は悩む。でも、一生ここでお世話になるわけにもいかない。
じゃあ、やっぱり……受けるしかないの?
「あゆみちゃん……可哀想だよ! なんとかして止めに行こうよ!」
「無駄だ。俺達みたいなガキがどうこう出来る話じゃねえよ」
その時、人の足跡が聞こえた。
「その話、断っても良いんですよ。あゆみさん」
足音の方を見ると、神崎さんがいた。
「か、神崎さん……?!」
「無理して結婚なんてしなくても良いわ。一生を棒に振ってしまうわ」
笑顔で神崎さんがそう告げる。
「……白原さん。その話はなかったことにしてくださいな」
「な! そんなことできませんよ! 第一、あなたには関係のない話だ……!」
「お父さん! 命の恩人になんてこと言うの!」
私はお父さんを一括する。
私は、自分で決めた答えを告げた。
「……神崎さん、ありがとうございます。でも……私、婚約します」
神崎さんは少し不安そうな顔をして私を見る。
「……それで良いの?」
「—はい」
婚約は3週間後。
私は3週間後にここを出ることが決まった。
完