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Re: 狼たちと同居中。【緊急アンケート実施中(結構大事な)】 ( No.251 )
日時: 2013/04/02 17:55
名前: 朔良  (ID: 2IhC5/Vi)

       第12章 涙

 リク君に引っ張られながら私は星屑荘へと向かう。
 扉を開けると、真君と和希さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい、あゆみさん。着替えてはやく来てくださいね」
「え、あの……何なんですか?」
「うっせーなあ。まずはやく着替えろよ」
 舌打ちしながら真君が言う。
「はあ……」
 私はおとなしく自室に戻った。

 5分後、私に用意されていたのは、和希さんがつくったのであろう御馳走だった。
「ど、どうしたんですかこれ? 今日は誰かの誕生日……なんですか?」
 何でこんなに豪勢なのか私は聞いた。
「違いますよ。あゆみさんの、婚約祝いです」
「え……」
 私の思考は一瞬停止した。
「そうそう! はやめにお祝いした方が良いかなーって」
 無邪気な笑顔でリク君が私に言う。
「あ……そっか。あ、ありがとう……ございます」
 何でだろう。これで良かったはずなのに。
 こんなに祝ってもらえて、幸せなはずなのに。
 —……何で泣きたくなるんだろう。

 私達は美味しく料理をたいらげた。和希さんが席を立ち、何かの箱を持ってきた。
「それは……?」
「分かんないの? ケーキだよ」
「こ、これ手作りですか?!」
 私が驚きながら和希さんに問うと、笑顔で頷いた。
 ……私じゃなく、料理は和希さんに任せていた方が良かったのでは……と苦笑いしてしまう。
「開けてみてください」
「はい!」
 私の目の前に置かれた箱を開ける。
「わあ、美味しそうで……」
 途中で言葉が切れてしまった。
 ショートケーキの上に乗っかっているチョコレート。そこには文字が入っていた。

『お前、素直じゃないな』真
『あゆみちゃんがいないと寂しいよ』リク
『もっと頼ってくださいね』和希
『アンタはそれで良いわけ?』泉
 
 4人からのメッセージ。
「……ふっ……」
 私はつい笑ってしまった。
「……ありがとうございます。でも、私……」
 そう言った途端、真君が私に告げた。
「……お前さあ、もっと素直になれよ! 折角ここまでしてやってんのに……。自分自身に素直になれ。婚約とか、それって父さんの為にあゆみが犠牲になるってことだろ? それで良いのかよ!」
 ……何で、そんなこと言うの……?
「……仕方がないでしょ?! 私が結婚すれば皆幸せになる! 私が何を言ったって変わらないんだから!」
「変わるよ」
 泉君が静かに言う。でも、真っ直ぐ、私を見ながら。
「泉の言うとおりだよ。変わる。ううん、僕らが変えてみせるよ」
 リク君も続く。意地悪な笑みじゃない。頼れる笑顔で。
「……もう少し、甘えてみてください」
 
 変わらない。
 どうせ変わらない。
 でも、だけど……

「……本当は結婚なんてしたくない……助けて……」
 涙と共に本心が出てくる。
「言えんじゃん」
 真君が笑いながら言う。

 でも、だけど……
 この人たちなら、変えてくれると思ったんだ。

                              完