コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 狼たちと同居中。 ( No.282 )
日時: 2013/04/05 13:52
名前: 朔良  (ID: 2IhC5/Vi)

      最終章 幸せ

 結婚式妨害作戦が終わって3日後、星屑荘にお父さんが訪ねてきた。その日は丁度よく神崎さんがいた日だった。
「……寿には追い払われたよ……」
「良かったね」
「良かったね、じゃないだろう!」
 泣きそうな顔でお父さんが言う。私は本当に良かったと思っているけども。
「……白原さん、後のことは私が対処しますのでお気になさらないで下さい」
「え!」
 神崎さんにそう言われた途端、お父さんの顔が明るくなる。
 
 神崎さんはマンションの部屋を1室、そしてお父さんの職も与えてくれた。
「あゆみさんはここに住んでいてもいいのよ。ときどきお父さんの許へ帰ったらいいわ」
 そう言い、後ろのソファに座っていた4人を見て言った。
「あの子たちも随分とあゆみさんを気に入ったみたいだしね」
「そう、ですか?」
 確かに心は開いてくれたかもしれないけれど……。
「ええ。あんなに心を開ける相手ができたのなんてあゆみさんが初めてじゃないかしら?」
 はじめて……?
 確かに、4人は最初全然一緒に活動することがなかった。でも、最後は一緒に私を助けてくれた。私が、きっかけをつくったのなら、相当嬉しい。
「私……もう少しだけ、ここでお世話になっても良いですか?」
 そう言うと、神崎さんはにっこり笑い、言ってくれた。
「ええ、もちろんよ。それに、あの子たちのお世話をしてくれているのだから」
 高校の学費は免除してくれるし、衣食住の面倒もみてくれる神崎さんに改めて感謝した。


 その夜、私の部屋をノックする人物がいた。
「はい、どうぞー」
 私が返事をすると、部屋に入ってくる気配を感じた。振り向いてみると、そこにいたのは泉君だった。
「どうしたの?」
 私は泉君の方へ近づく。
「……あのさ、俺アンタのこと好きみたいなんだけど」
「……はい?」
 えーと、何の冗談?
「言っておくけど、冗談じゃないから」
 私の心を読み取ったように泉君が言う。
「……たまに思うんだよね。アンタがいないとき、『俺の隣にアンタがいれば良いのに』って」
 急に告白されてしまい、戸惑ってしまう。
 まさかあんな私のことを嫌っていた泉君がそんなこと言うなんて……。
「で、あゆみはどうなわけ?」
「え、どういう意味?」
「あゆみは俺のことどう思ってるの? って意味」
 私が……?
 答えは出ているけども、やはり言いにくいことはある。でも、言わないといけない。泉君の視線が怖いし。
「……好き、なんだと思う」
 小声で私は呟く。
 その瞬間、泉君の声より先に
「おめでとーっ!」
 と、リク君の声が聞こえた。
「リ、リク君?!」
 その後ろから真君と和希さんも出てくる。
「おめでとうございます」
「何で皆が……!」
「じれったくて長かったぜ」
 ……覗き見していたと……?!
「まあ、こうなるとは思ってたけど」
「思ってたの?!」
 泉君がそう言い、私は心底驚いてしまう。
「明日は豪勢にしなきゃねー」
「頑張って作りますね」
 こんなに騒がれるとすごく照れるのだが。
「……ねえ、覚えてる? 公開処刑のこと」
「……え? 急に何で……」
 覚えている。執事喫茶で泉君が言った言葉だ。
「ここで公開処刑しとこうか」
 そう意地悪だけど楽しそうな笑みを浮かべながら泉君が私の髪にキスをする。
「い……いやあああああ?!」

 —私は祈る。
 この幸せがいつまでも続きますようにと。
 

                         end