コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 狼たちと同居中。 ( No.33 )
日時: 2013/02/03 17:52
名前: 朔良  (ID: 2IhC5/Vi)

 【3章続き】

 僕は、メモの横にあったペンを取り、書き足した。

『お弁当、ありがとうございます 和希』
 僕は、家を出た。

 
 教室の扉を開くと、私の大の親友達が待っていてくれた。
「やっと来たー、あゆみ!」
 机に鞄を置いた途端、伊代音が抱きついてきた。
「おはよ、伊代音」
 笑顔がとても可愛い、大澤伊代音。青い目が特徴的な僕っ娘だ。
「伊代音がまた宿題忘れたらしいわ」
「え、また?」
 クールな声が響く。彼女は月闇クロ。目がオッドアイで、最初は怖かった。だけど、とても友達思いの良い人である。
「ご、ごめんね、伊代音ちゃんに教えようと思ったんだけど…私も全部は出来てなくて…」
「いいんだよ、伊代音がやってこなかったのが悪いんだから」
「あゆみ、ひどーい」
 おどおどしながら話すのは、佐山ゆき。世で言う「地味子」だが、メガネをはずすとかなり可愛い。優しくて、良い子だ。

「ひどいって…、その私に見せてもらおう、とか思ってんでしょ」
「……」
「…図星よね」
 無言の伊代音にクロは追い打ちをかけた。
「でも、すごいよね、あゆみちゃん。常に学年1位から落ちたことないんだもん」
「あはは……」
 人には言えないが、私は奨学金扱いで学校に来てる。学年1位から落ちることなんてできないのだ。
 
 私のノートを見せながら、ふと気になったことを聞いてみた。
「ねえ、皆さ…『星屑荘』って知ってる?」
「「「え?」」」
 3人が一斉に私を見た。
「ちょ、ちょっとあゆみ…逆に聞くけど…もしかして、知らないの?」
「3日前に知った」
 平然とそう答えると、皆は声も出さず絶句していた。
「え? 何? 知らないのって…そんなにおかしい?」
「…当たり前でしょ! うちら2年生なのに…おかしいよ!」
 伊代音が叫ぶ。
「…星屑荘って言ったら、この学校の『王子四天王』が住む荘よね。宮野真、園田リク、梅澤和希、平井泉…」
「さすがだね、クロちゃん…」
 本当に。クロは裏では情報屋の異名を持っているのだ。
 …私がおかしかったのか…。確かにあの4人は王子と言っても過言ではない。今まで勉強しか頭に入れてこなく、恋愛など、どうでもいい、と思っていた私が思うのだから、本当にすごいのだろう。
「…で、何で急に気になったの?」
「え」
 ゆきにそう言われ、どう取り繕うか必死に考えた。「一緒に住んでるんだ〜テヘぺろ!」…なんてやれない!
「いや…なんとなく、噂を聞いて…ね」
「ふーん…?」
 どうにか話題を変えようと思ったのに、こんな時に限って話題が浮かばない。
「でも、本当にカッコイイよね〜、惚れちゃいそう」
「伊代音…あなた、他校に彼氏いなかったかしら?」
「別れた」
 迷いなくそう発言する伊代音をたまに尊敬したくなる。
「うん…伊代音ちゃんの言うとおりだよね」
 ゆきがそう言った途端、少し驚いた。
「ゆき…、いつもそういう会話乗ってこないのに珍しいね」
 そう言うと、ゆきは目を丸くして、顔を赤くした。
「へっ?! ベ、別に平井君がちょっと気になってるとかまったく思ってないし、かっこいいな〜とかも思ってないからね!」
 …分かりやすい。
 でも、平井さんはあの4人の中でも1番絡みづらい。「近寄らないでオーラ」がすごい出てる。
「…ゆき、応援してるよ」
「え?! 何を?」
 うろたえるゆきを見て、可愛いと思った。
「クロは? いい人とかいないの?」
「うん? …園田リク…は気になる、かもな」
 顔色一つ変えずに言うクロを伊代音が笑いながらつつく。
 私は、人生で「恋」というものをしたことがないから、そういう話には合わない。
 ぼそりと、私は呟く。
「お弁当…持っていったのかな…」