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Re: 狼たちと同居中。 ( No.66 )
日時: 2013/03/04 18:02
名前: 朔良  (ID: 2IhC5/Vi)

      第5章 あゆみ、和希 【2−1】

「……まじか」
 土曜の11時20分。私、白原あゆみはキッチンに立っていた。昼食を作っていたのだが、かなり大変なミスを犯してしまった。
「……ひき肉……買い忘れた……!」
 宮野さんに「昼食はハンバーグが良い」と言われ、昨日買い物してきたのに、どうやら一番大事であるひき肉を買い忘れてしまったのだ。冷蔵庫を開け初めて気がついた。
「今から買いに行って、作っても……昼には間に合わない」
 私は軽くうなりながら何か案を考えていた。
 その時、後ろから声が聞こえた。
「白原さん、何をしてるのかな?」
「え……、う、梅澤さん?!」
 声をかけてきたのは大人な雰囲気が魅力な梅澤和希さんだった。
「あ……ハンバーグを作ろうと思っていたんですけど、ひき肉を買い忘れてしまったみたいで……」
「ああ、そういえば真が食べたいと言っていたね」
 梅澤さんにまで宮野さんは「ハンバーグが食べたい」と言っていたのか……。
「で、あんなにうなっていたわけだ」
「え! そ、そんなにうなっていましたか?」
「ええ、かなり」
 さらっと傷つくことを言うな……、と感じた。
 そんなことを考えていると、梅澤さんが急に冷蔵庫を開け、何かを探し始めた。
「あの、梅澤さん……?」
「ああ、あった。……これなら十分作れるね」
 梅澤さんが取りだしたものは豆腐だった。
「……ああ! でも、ばれませんか……?」
「大丈夫。真は食に関しては鈍いから。まあ、その他も鈍いけども」
 ところどころ悪が入っているんだよなあ……。
 宮野さん達を騙そうというのだ。ひき肉代わりに豆腐を使って。もしかしたら気付かれずに済むかもしれない。
「さ、じゃあ作りますか」
「え? 私が作りますから梅澤さんは座っていてください!」
「いえいえ。白原さんが何かドジを踏んだら困りますからね?」
 満面の笑みで微笑みかけながら私に言う。笑顔の破壊力は半端ないが、言葉とのギャップがすごい。


                     続きます。