コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 狼たちと同居中。【3/7〜3/15までアンケート実施】 ( No.86 )
- 日時: 2013/03/06 19:35
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第6章 平井泉、攻略したい。
こんにちは、白原あゆみです。
私は今、学校にいます。いえ、詳しく言うと、屋上です。実はですね、自販機を目指して歩いていたら、屋上で寝ている平井泉さんを見つけたんですよ。こりゃ仲良くなるチャンスだろ! と思い、現在屋上にいます。で、やばいんですよ。分かります? 平井さんの寝顔が! 寝ててもこんなに美形てありえなくないですか?
「……何、してるわけ?」
「ひゃあああ?!」
急に、声が聞こえて驚いた。平井さんが起きたようだ。
「あ、す、すみません……」
「……人の寝顔見つめて、『常識』ってものがアンタにはないわけ?」
うわあ……辛辣。平井さんは、梅澤さんのような隠れsとかじゃない。心の底から私を邪魔だと思っているだろう。
「で、何?」
寝てたところを邪魔したからだろう。機嫌の悪さはマックスだった。
「いえ、あの……」
どうしよう、『仲良くなりたいです〜』とか言ったら、殺されるほどの目つきで睨まれそうだ……。
「特に何もないのに、俺の邪魔したってこと? アンタ、本当何様?」
ううう……ですよねー。
でも、ここで引いたら一生仲良くなれない気がする!
私は意を消して去ろうとする平井さんの腕を掴む。
「あの……っ、わ、私は『アンタ』ではなく白原あゆみ、です!」
少し驚いたような顔をして、平井さんはため息をついた。
「……で?」
「へ?」
…………そりゃそーだろー。
だから何? って当たり前だよー。
でも、どうにかして、会話を続けなきゃ……!
「ひ、平井さんはどうして皆と関わりを持たないんですか?」
「……そんなの、どうだって良いと思うけど」
呆れたような顔で平井さんが私を見つめてくる。それだけで倒れそうなほど顔が整っている。
「どうでもよくありません! お世話になってる『星屑荘』の住民です!」
つい、大声を張り上げてしまう。
「別に。めんどくさいから、そんなの。俺は……誰も、信じれないから」
『誰も、信じれないから』と言った平井さんの顔がすごく悲しく見えた。まるで、『何か』の感情を押し殺しているみたいに。
きっと、そのことを私が感じたのは、私も、そういう経験があるからだと思う。
似てるんだろう。私と、平井さんは。
私は、無意識のうちに平井さんに抱きついた。
「……何してんの、アンタ」
女の子に抱きつかれてその反応は少し傷つくけども。
「ひら……泉、君。私、あなたのこと知りたいです。私と仲良くしてほしいです。誰かを信じる気持ちを知ってほしいです。一緒に……居たいです」
思ったことを素直にぶつけた。
体を離し、泉君を見ると、表情に変化は何もなかった。
「……馬鹿じゃない? 何がしたいのかが分からない」
「う……」
さすがに反論できない。
私は少しうつむいた。その時、急に抱きしめられた。力強く。
「……?!」
「黙ってて。……仕返しだから」
仕返し? それって、私が抱きしめたから?
混乱する頭を整理しようと思った時、とどめをくらった。
耳元で囁いて去って行った、狼みたいな王子の言葉。
『—アンタのこと、信じてはないけど、住人の人間以上に、信頼できそうだよ、……あゆみ』
私のこと、信じて?
第6章 完