コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ×ツバサ 第1話出会い ( No.9 )
- 日時: 2013/05/12 11:43
- 名前: 外園 伊織 (ID: hr/PPTT1)
そうと右隣の席の鳥居 空の方を見ると、彼は前に座っている寺野 昴となにやら面白そうに喋っている。空が立っているときにわかったことだが空の身長は自分より15cmくらい高い。和音は彼の声がどこかで聞いたことがあるような気がすると思った。でも、クラスメイトに会ったのは今日が初めてのはずなので、気のせいだと自分に言い聞かせた。
ふと、あちこちから会話が聞こえるので周りを見渡すと、みんな男女問わず楽しそうに質問し合っている。
—えっ、もう友達づくりをしているの!?
誰とも話をしていないのは自分だけだと気づくと和音は焦った。このままではまた独りになってしまう。
何気なく空の方を見ると、本人と目が合ってしまった
しまった…!
和音は慌てて視線をはずした。
が、遅かった。
人懐こそうに笑った空は、屈託なく和音に話しかけた。
「齋藤さんだよね。よろしく」
そういわれたからには返事をしなけらばならない。和音は逃げ出したいのを堪えて「…よろしく、鳥居君」と、瞬時に笑顔をつくった。
相手は何度か目をしばたかせると、口を開いた。
「空でいいよ」
え?と聞き返すと、空はもう一度言った。
「空でいいよ。…その、今までみんなにそう呼ばれてたから」
「………」
こんな自分に話しかける人がいるのかと和音は驚いた。彼女は一度も男子を名前で呼んだことがなかったからだ。
気恥ずかしいのもあったが、男子達は和音に名前を呼ばれるのをことほか嫌がっていた。和音はそれに気づいていたので、彼らと必要以上に接することや名前を呼ぶこともしなかった。
ほかにも理由があったが、嫌な思い出ばかりなので考えることをやめた。
和音はだまったまま、ただ頷くと前に向き直ってすぐにうつむいた。
空はそんなほかの女子とは違った雰囲気をまとった和音の横顔をちらっと見た。
彼女に話しかけたとき、一瞬何かを堪えたような顔をしたのに、空は気づいた。
そして、何より気になったのは。
—誰か助けて…。
あの悲鳴は彼女の声だったということ。
—誰か助けて…
いつだったか聞こえてきたあの声は、
君だった—
教室のドアが開いたのでクラスメイト達が話をやめると、一人の男教師が入ってきた。
「はじめまして。俺はこのクラスの担任になった、清水 宏樹だ。担当教科は国語でダンスコースとダンス部の顧問をしているので、みんなよろしくな」
清水先生は30代はじめごろに見え、楽しそうな先生だ。
先生は出席番号順に生徒を男女一列ずつ廊下に並ばせると生徒を引き連れて体育館へと歩き出した。