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Re: ココロ×ツバサ 第1話出会い ( No.10 )
日時: 2013/05/19 13:30
名前: 外園 伊織 (ID: FFRec9Wj)

入学式は思ったとおりとても長く感じて、その間、私は別のことが脳裏に浮かんだ。
両親に勧められた大学付属の高校に合格したとき、嬉しそうに「良かったね」と笑っていた母の横顔。
私は元々高校はどこでもよかった。別に進学したいと思ったこともないし、私のことだから周りに打ち解けられないまま三年間が過ぎてしまいそうだ…。
—お母さんたちが私の為に高校進学を勧めてくれたんだ、迷惑をかけちゃいけない。
そう思って必死に受験勉強をしていた。今思えば長かったし、ある意味達成感があったかもしれない。
それはさておき。
ちょうど校長先生の言葉が終わった頃、アナウンスがかかった。
『次に新入生の紹介です。新入生は呼ばれたら起立して下さい』
はやく終わらないかなぁと思い始めた。すでに私の集中力が切れかけているのだ。
「鳥居 空君」
「はい」
アナウンスやほかの人の声はさっきまで素通りしていたのに、どうしてか彼の声は耳に残った。
そして気づけば私は彼の姿を追っていた。
そんなことをしている自分に驚いた。
—今までこんなことはなかったのに…。
きっと、彼に話しかけられたことがまだ信じられないのかもしれない。
友達からも暗いと言われ、みんなに避けられていた自分に話かける男子がいるとは思わなかった。
—あの人、どうしてこんな私に声をかけたのかな…。
私そんなに暗く見えたのかな。それとも誰とも話をしていないから不憫に思って気にかけたのだろうか。
和音は、はぁとため息をついた。
駄目だな私。高校でも人に気を遣わせてしまいそう。
物思いにふけている間に閉会の言葉が述べられる時間になった。


入学式が終わると和音は校舎の裏にある女子寮へと向かった。
広場を抜けて数十メートル歩くと道が二つに分かれていて右側に男子寮、左側に女子寮が建っている。
もちろん男子が女子寮、女子が男子寮に行くのはもちろん禁止されている。
式の後に配られたプリントには、寮で生活していく際のルールが書かれていた。

『生徒は他学年の階には近寄らないこと。
遅くまで起きていて遅刻することがないように。また、朝食と夕食の時間は決まっているので、時間を守って行動すること。
自分勝手な行動は相手に迷惑をかけます。試験期間は勉強を怠らないようにしましょう。』
そして最後はこう締めくくられていた。

『—学校生活の態度が悪く、以上のことを守れない人は即退学とする』
実に厳しい学校だな、と和音は思った。


和音の部屋は一階の29号室。部屋の割り当ては一年生のときの出席番号順になっていて三年間同じ部屋だそう。
部屋に入った和音は制服を脱ぎ、Tシャツにジーンズというラフな格好に着替るといったんぐるりと部屋を見渡した。
右側にベッドとその手前に机が置いてある。左側はいくらかスペースがあり、今は家から届いた和音の荷物が置かれている。あとは窓がひとつある造りになっていた。
届いた荷物の中にパーカーを探しているとトントンとドアを叩く音がした。
—誰だろう…。
そう思いながら和音はパーカーを探すのを中断するとドアを開けた。
「何ですか?」