コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: まるで磁石 【見やすくなりました!! ありがとう。】 ( No.106 )
日時: 2013/03/09 17:17
名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)

〜今日はルミの日〜 続きから





玄関に立っていたのは……

「ああ、ルミ、いたの?」

草宮さん。

「うん、おかえり」

当たり前のように言ってみるが、すこしドキドキしてしまうあたしの心臓は、正直者だ。

「ルミ、フレディの散歩、さぼってなーい? 俺にあった時、なんかもう、ギャンギャン吠えて……」

困ったような笑みを浮かべて、犬のフレディを見やる。
だいぶ、走らされたらしい。汗をかいていた。

「結局、散歩行ってきてくれたんだ」

「なんか、言う事ないですか?」

グッとまじめな顔になった草宮さんの顔を見て、ありがとう、って言えばいいことだけど……そんなに素直に言えるあたしでは、ない。


じゃあ、今日の夕食は……

「今日はハンバーグにするね」

決まり。ハンバーグは、草宮さんの大好物だ。

「あ、マジで!! っしゃあ! もうちょっと、散歩してくる」

まじめな表情が、崩れて、くっしゃっとした笑顔になる。
この人は真奈実と同じようなタイプの人間であると、つくづく思う。

今はきっと、散歩後のハンバーグのことしか考えていないんだろうなぁ。

「いってらっしゃい」

帰ってきたばっかりなのに、いそいそと家を出ていく。

「あ、なんか足りないものあったら、ケータイによろしく!! 買ってくるから!」

「はーい」

閉めかけたドアの隙間から、笑顔を覗かせ、それから、フレディに声をかける。

「フレディ、行くぞ!!」

ワンワンっ、嬉しそうなフレディの声。

バタンとドアが閉まり、その声も、遠くなっていく。


すごく、好きなのになぁ。

そういう濃やかなところも。

食べ物のためなら、なんでもしちゃうようなところも。


だって、食費かさみ過ぎてアパートの家賃払えなくなるような男の人って、この世の中に、何人いると思う?
…しかも、あたしの家に居候だなんて。

超バカじゃん。


草宮さんとフレディの声が完全に聞こえなくなって、家は静かになる。あたしは部屋に戻ると、”簡単、おいしい、夕食ベスト100”をつかんで、キッチンに走った。

「冷凍庫に、ひき肉があったはず……」



食べることが大好きな、そんな彼のために、あたしができることは……




おいしい夕食をつくること、なのだ。