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Re: まるで磁石 【見やすくなりました!! ありがとう。】 ( No.115 )
日時: 2013/03/10 11:32
名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)

〜真奈実に戻りつつ…〜


「えぇ? もう、なんで買い忘れたのー」

「ごめんね、今夜カレーだから、絶対に必要なのよ」

そうでしょうね、お母様。

カレー粉を入れないカレーなんて、この世に存在しないですものね。

なんで、カレー作るのにカレー粉買い忘れるのよー、もう。

スーパーまで、徒歩15分。
夕方は、まだ涼しいけど、日はだいぶ長くなっている。

カレー粉代の500円を握りしめて、通学路とは、反対の方向を歩く。

ルミちゃんの家が、もうすぐ……見える?

んん?

「フレディ、行くぞ!!」

「わんわんっ!」

ルミちゃんの家から、ジャージ姿の背の高い男の人とフレディが、勢いよく飛び出す。

「おっおおお……?」

だ、誰だ!? フレディってことは、ルミちゃん家の犬だよね?

1人と1匹はこちらに、走ってくる。
なんか、妙にドキドキしてしまう……。どんどん近づいてきて、顔が見える。

さあ、誰だー……?

「あ、草宮さん……!!」

と思った、その瞬間!!

「わんわんわんわん!!!」

こっちに向かって、フレディの頭突きが炸裂する。

「わ、あわわわーーーーー!」

「こ、こら、フレディ、やめーーー!!」

草宮さんが慌てて声をあげるが、時すでに遅し。

フレディはあたしの腰のあたりに頭突きをくらわせ、あたしの体が宙に浮く。

わあわああわ!! 一瞬、スローモーションになった。

2・3メートル後ろに飛ばされて……。

どっすん……

鈍い痛みが、腰から全身へと伝っていった。

「……い、いい、い、た」

痛がるあたしなどお構いなしに、フレディはあたしの顔をなめまわす。
く、くすぐったいから、やめてーー!

「あの! すみません!! 大丈夫!!?」

駆けつけた男の人は、やっぱり草宮さんだった。

ううっ、痛いよー……、フレディ。フレディのふわふわの毛に、おもわずくしゃみが出る。

くしゃみをしたあたしに、草宮さんは、焦ったような顔をした。

アレルギーの心配を、一瞬で悟ったようだった。

……なんて、濃やかな人なんだろう。

あたしの顔をなめるフレディに、草宮さんは、

「だめ、離れて! シット・ダウン!!」

怒号を飛ばす。

毅然とした態度の男の人は、さすがに強い。

フレディは、鼻をならしながら、あたしから離れた。

心配そうな顔をした草宮さんに、先手を打つ。

「だ、大丈夫です! アレルギーとかじゃ、ないんで」

ルミちゃんは、こんなところに惚れたのかもしれないと、自分なりになんとなく思案してみる。

「おとなしくして」

草宮さんはほっとした顔で静かにフレディに言い聞かせて、フレディはちゃんとその指示を聞いていた。

なれてるな。
フレディは、あまり人懐っこくないから、そうとうだと読む。

「本当にすみませんでした」

腰をさすりながら立つあたしに、草宮さんは、キッチリ、深ぶかと頭を下げた。

「い、いえ、だいじょぶなんで」

それにしても、ルミちゃんとの関係は、どうなんだろう? 

こんなにフレディになれてるって、一体何者なのか?

「クーン…」

フレディが足に寄り添ってきたので、しゃがみこんで頭をなでる。
おお、そう言えば久しぶりだね、フレディ。

「フレディ、いい子だねー、ルミちゃんが言うほど、ダメじゃないよー」

サッと頭を上げた草宮さんが、まじまじとあたしの顔を見つめる。

「…あ、もしかして、この間の……ルミの友達??」

「……、あ。はい」

「あ、やっぱり!! フレディがよくなついてるから!!」

あなたこそ、フレディになれてらっしゃいますが……。

あたしは、フレディのふわふわの頭をよしよししながら、フリーズする……。

っていうか、ルミって言った!! よ、呼び捨てで!

あなた、何者!?

「夕食で、ルミとしゃべると、真奈実真奈実って、あなたの名前しかでなくて」

いやいや、草宮さん、すごく嬉しそうにはにかむけどさ……。

夕食って……ますますますの2乗でわけ分からん……。
ますますますの2乗ってことは、ますますますますますますますますますだから、ます×9か…。

って、どうでもいいし、今!!

混乱しだす頭で、必死に考える。

考えついた先は……もしかして、ど、同居とか!?

考えただけで、気が遠くなる。じょ、女子高生が……。

いや、まて、ルミちゃんの家には、両親がちゃんと住んでいる。

ど、どういうことですかーー!?

「わん!!」

意識がさよならしそうなあたしに、フレディが吠える。
ああ、ありがとう、フレディ……。でも、もうあたしは……。

意識が飛ぶ寸前で、草宮さんは、決定的な一言を放った。

「ああ、ごめん、申し遅れました。俺、ルミの家で居候している、草宮さとしです」

い、居候!?

な、なるほど……?

こんがらがった頭で、はっきりと思った。


ルミちゃんこそ記者会見だな、と。