コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: まるで磁石 【参笑400超え!!ありがとう!!】 ( No.130 )
- 日時: 2013/03/11 23:52
- 名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)
「ルミさん、このことについて、詳しくお聞かせください!! パシパシ、パシっ」
あたしは、箸にさしたりんごをマイクがわりにして、早速、記者会見を開く。
そうそう、ご丁寧に、カメラの音までつけて。
午後、お昼休みの時間、やっぱりここ、屋上で。
「うーん、彼は、居候よ。本当に食費がかかりすぎて、家賃が払えなくなったって言う、バカ男よ」
「じゃあ、なんでルミちゃん家なんですか!?」
「昔住んでた家で、一時期一緒に暮らしてたのよ。彼の大学が、前のあたしの家の近所だったの。そういう縁で、あたしの家。あたしが連れ込んだわけじゃないわよ」
……。ってな感じで、質問を投げかけて。
ルミちゃんは、最後の最後まで、そのクールさを保つ。
と、思っていた。この質問を投げるまでは。
「家では、何て呼んでいるんですか!? 草宮さんのこと!」
それにしても、この口調って、案外疲れる。記者さんって、ほんと、ご苦労様だ。
どうせ、”草宮さんよ”とか、つめたーく返されると、思っていた。
でも、それが……。
「……」
「ルミちゃん?」
ルミちゃんは、黙り込む。
え、ちょっと、ルミちゃん? まさか地雷か……。
そう思ったとき、ルミちゃんは、決まり悪そうに、苦笑いをした。
「ねぇ、真奈実。それって、言わなきゃダメ?」
そんなに気まずい呼び方してんの!? え、じゃあなに、もしかして……。
「も、もしかして、る、ルミちゃん……だ、ダーリンとかって呼んでんの!?」
間髪いれずに、ルミちゃんの怒号が飛ぶ。
「ばか!! きしょいこと言うな!!」
「はい、すいません!! そんなこと考えたあたしがバカでしたぁ!!」
マイクのりんごがぶっ飛ぶ勢いで謝ってから、今度は慎重に尋ねる。
「じゃあ……なんて?」
少し間があって、ルミちゃんはその間にもぐもぐと弁当のなかのご飯を口に全て入れた。
少しでも声がくぐもるようにしている。そうとう、言いたくないらしい。
必殺・ほっぺたパンパンの術! ってところかしら?
……ふふふ、でもね、今日の真奈実は違うのよ。今日は逃がさないのよー……。
リスみたいにほっぺを膨らませたルミちゃんは、つぶやくように言った。
「……さとにぃ……」
ぼそっと、本当に小さな声が聞こえた。
えぇ? ルミちゃんの声?
ぼやっとしている間に、
むしゃ、と、マイクにしていたりんごをかじられた。
えぇ!? あなたの口、まだ入るんですか!?
あっけにとられてるうちに、ルミちゃんは、ものすごい勢いで口の中のものを噛み砕いて、消化した。
そして、決め台詞!!
「真奈実、食べ物をお箸にさすのは行儀悪いよ」
う、うわぁ、なかったことにした、このひと!!
「ルミちゃん、案外かわ……」
かわいいね、と言おうとして、遮られた。
「りんごが乾燥するわ! のろま!!」
もう完璧にシャットアウトだ。
「ルミちゃーん…」
しゃり、むしゃっ。りんごにルミちゃんがかぶりつく。
わぁ、完全無視ですか。
ルミちゃんの横顔は、いつもより赤かった。
さとにぃ、だってさ、かわいい。