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Re: まるで磁石【参笑600、ありがとう!】 ( No.180 )
日時: 2013/03/20 18:30
名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)


ようやく涙が止まったころに、あたしは口を開いた。

「なんか……ルミちゃんって、ひとりでなんでもできて」

もちろん、何で揉めたかは、言わなかった。

ただ……。

「けんかしながら……自分の黒いところが、全部出てきちゃって……」

自分のこころが、自分のものでなくなる感覚……。

藤村くんがそんなことを感じたことは、あるのだろうか?

「ひがんでたし、やつあたりだったし、ルミちゃんがいろいろしてくれたのに……。ありがとうって言わないまま、けんかになって……。友達で、いられないかもな……」

ゆっくり、ひとつ、息をする。

こころに、少しだけ、晴れ間がみえた。

藤村くんは、この瞬間を、待ってくれていた。顔をあげると、にっこり笑う。

「真奈実、すごいな」

「え?」

……予想外の言葉に、目を丸くする。

「意地張るだろ、普通。俺だったら多分、相手が謝るまで、ねばるかなぁ…。あとね」

藤村くんは、話を続けた。

「黒い自分って、誰でも出るもんだよ。俺もある」

そう言って、苦笑した。

藤村くんにも、あるんだ……。そういう、気持ち。

「いや、大会前になるとさ、みんなピリピリするんだよ。バドって、個人競技だからさ……。俺も、ずっとそんな感じで……ここ一週間は、特に……気分がね」

だから、元気なかったんだ……。

やっと、なにかを、つかんだ気がした。

「そんで、朝晩走りこみしたら、練習でぶっ倒れるし」

照れたように、藤村くんは、笑う。

どうやったら、そんなふうに、黒の自分を消化して、笑顔でいられるのだろう?

「だから、助けてくれた人に、感謝してるよ。ありがとな、真奈実」

「いや、そ、そんな」

あたしもそんなふうに、なりたいな……。

心底、思う。
この人に恋をして、ほんとうによかったと。

まずは……ちゃんと、お礼を言わなきゃ。

「あの、あたしも……ありがとう。話、聴いてくれて」

少し恥ずかしくなって、うつむいた。

「おまえって、ほんといいやつだな! よしよし、褒美だぞーー!!」

藤村くんは、わしゃわしゃとあたしの頭をなでる。

「ちょ、い、犬じゃ、ないし……」

は、恥ずかしいんですけどーー!!


でも、恥ずかしがる余裕ができたし……。

今日にでもフレディに頼んで、ルミちゃんに、メールしようか……。